クビ社長が倍返し、小説を超える逆転の成功物語

突然の社長解任、そして無職のどん底へ――。本書の主人公、Knot代表取締役社長・遠藤弘満は、80年ぶりに日本製量産腕時計メーカーを誕生させた人物。2015年に東京・吉祥寺に小さな店をオープンすると、連日の大行列。時計が売れない時代に一大ブームを巻き起こす。その遠藤のビジネスに興味を抱き、筆を執ったのは旧知のジャーナリスト・金田信一郎だ。

Knot代表取締役社長 遠藤弘満氏
Knot代表取締役社長 遠藤弘満氏

遠藤は「最初はもっとビジネス寄りの内容だと思っていたんですが、私の人生が赤裸々に描かれていて、ちょっと参りました」と苦笑する。

通信販売会社のバイヤーを経て、03年に輸入商社を設立した遠藤は、米軍特殊部隊用腕時計「ルミノックス」やデンマークのブランド腕時計「スカーゲン」などを輸入、販売し、日本で大ヒットさせた。しかし、12年に米国大手ブランドによるスカーゲンの買収で輸入販売権が消滅。信頼していたオーナーに代理店の社長を解任されてしまう。

「人が作ったブランドで勝負しても二の舞いになるだけだ。自分で作った時計を自分で売ろう」と、メイド・イン・ジャパンの時計ブランドの設立を決心するが、時計の生産拠点は中国にシフトしていた。

金田信一郎『つなぐ時計 吉祥寺に生まれたメーカー Knotの軌跡』(新潮社)
金田信一郎『つなぐ時計 吉祥寺に生まれたメーカー Knotの軌跡』(新潮社)

「13年末当時、日本に独立系の時計組み立て工場は僅か数社しか残っていませんでした。何度も通い頭を下げましたが、門前払いを食らい、諦めかけていたのですが……」

意外な突破口から国産腕時計の製造に漕ぎ着けた遠藤は、次に、昔ながらの技術を守り続ける伝統工芸を素材とした時計ベルト作りに着手する。

「本書には当社のパートナーでもある、日本の伝統的なモノ作りに携わる人たちがたくさん登場し、その技術力や魅力が丁寧に描かれています。コロナ禍で苦しむ中小企業が多い今、力を合わせ、持ちつ持たれつの関係で成功に繋げていかねばなりません」

遠藤弘満
Knot代表取締役社長
1974年、東京都生まれ。通信販売会社のバイヤーとして活躍し、世界各国の時計を仕入れて日本で大ヒットさせる。2014年、同社を設立。
【関連記事】
「製作費210億円のムーランが大コケ」中国依存を強めるディズニーの大誤算
まもなく絶滅する「普通のサラリーマン」を待ち受ける三重苦
トヨタがコロナ危機のとき「役員向けの報告書」を現場に禁止した理由
「コンビニは敵ではない」急成長シャトレーゼの60円アイスがやけに美味いワケ
テレビで異常なほど「携帯大手3社のCM」が流されている本当の理由
(撮影=岡村隆広)