私たちの周りを見渡しても、コロナを機に都市郊外や地方居住を行動に移した人がどれほどいただろうか。

在宅勤務(リモートワーク)といっても、その生産性について多くの企業が検証中である上、オフィスにおいても一定のソーシャルディスタンスを確保しようとすると必要面積はそう小さくならない。通勤がゼロになるケースは非常にまれで、わざわざ密な電車やバスといった公共交通機関を使う気にはならず、むしろできることならもっと会社に近づきたいはずだ。

75m2以上だった3LDKは、今は60m2台前半に

確かにコロナ期間中の、各種メディアによるアンケートをとった結果を見れば、都市郊外や地方移住を考えていたことがうかがえる結果も出ている。また不動産検索サイトの運営者に聞けば、自粛期間中は検索の範囲が都市郊外や地方へと広がったものの、自粛明けには元に戻っている模様だ。他先進国のようにコロナの影響がもっと長引けば、あるいはロックダウンといった深刻な事態になれば、大都市から都市郊外や地方への人口移動は起きたかもしれないが、わが国では自粛期間が約1カ月で済み、感染者数も死者数も圧倒的に少なかったことから、この程度で収まったともいえる。

在宅勤務が増えることで、自宅にスペースが必要になる。そうすると従前は65m2でよかったものが、75m2必要になる。居住面積を広げるためには、駅から遠くするか、中心部から遠くするか。その選択肢に変わりはない。新築マンションでは最近、在宅勤務用のブースをオプションで提供する動きが出ているが、専有面積が増えているわけではないので、収納を減らした形をとっている。

自宅で働く若い男性
写真=iStock.com/Geber86
※写真はイメージです

2013年のアベノミクス以降、3LDKは75m2以上が当たり前だったものが、今は60m2台前半になっている。とはいえこれを機に供給側も専有面積を広げるわけにはいかない。そこで中古物件に目が向けられている。

中古住宅の成約件数は、8月までは前年同月より増えた。9月は首都圏は7%マイナス、都心3区は23%のマイナスになったものの、それは取引が萎んだというより、在庫がものすごい勢いで減った要因の方が大きい。その証拠に、価格は上がっている。

都心3区中古マンションの「在庫数」と「成約単価」