日本が独り勝ちする方法がある

【渡瀬】なぜ日本の一部の言論がそういう傾向になってしまうかと言えば、基本的に「日本は弱小国である」という前提でものを考えているからではないかと思います。「米中どちらにつくか」という属国マインドからものを考えがちで、日米関係、日中関係という一対一のバイラテラルの関係でしかものを見られない。中国もそうだと思いますが、アメリカは国際社会を面でとらえ、その地域で自らの国益に沿う状態を維持するためにどうするかという視点で考えています。しかし日本はそうではない。

「日本は弱小国だ」と言うけれど、日本は今も世界第3位の経済大国です。第1位が第2位と揉めているとなれば、当面は第3位が勝敗を握っているので、どちらからもいい条件を引き出せるんです。この傾向は少なくとも20~30年は続くのに、日本人の思考はそうなっていない。「アメリカのアプローチに応えないと見捨てられる」「それより中国と結婚したほうが幸せになれるんじゃないか」みたいなナンセンスな話ばかりしているように思えます。

【中川】「戦いません、勝つまでは」を掲げる中国は、世界第1位と第3位を敵に回したくはない。一帯一路に関しても、アメリカとの衝突を避けるために、西へ西へと進んでいって、アフリカでのプレゼンスを高めている。そのさなかに、尖閣問題でアメリカの虎の尾を踏む様な真似はしないし、中国からすると、する意味もないと思います。

アメリカとの争いを避けて西に進出する中国

中国は15年から16年ごろにかけて、日本を「地域大国」に設定しました。自身は「超大国」だと認識していますから、もはや次元が違うと考えだした。超大国は地域大国と戦う必要はありません。そうした変化をきちっと押さえる必要があります。

【渡瀬】中国は歴史認識問題などでも騒がなくなりましたもんね。

【中川】そうです。「地域大国」である日本とは戦う必要はなく、友好だけでいい。もちろん、中国共産党の正統性のために、今まで言ってきた靖国問題や慰安婦問題などを撤回するつもりはさらさらないので、一応、外交部報道官が「キレ芸」を披露するだけ。全人代で非難決議を出したりはしないんです。そこを押さえたうえで、日本も中国にディールを持ち掛ければいいんですよ。

【渡瀬】そもそもアメリカは自分を脅かしかねない第2位の国が嫌い。叩くのは当然で、それはかつて日本がやられたことじゃないですか。

その当時のアメリカは中国を一生懸命支援していた。共和党も民主党もズブズブだったんです。ところが中国が大きくなりすぎて第2位になったので、今度は中国を叩いているというだけのこと。そこで日本が得られる利益は大きいはず。