「SNSで拡散されている言葉」をそのまま店名にした
店舗のネーミングにもSNSの戦略に対するワークマンのこだわりが見える。
もともと「ワークマン女子」という言葉は、ワークマンのウエアを着た女性がSNSに投稿する際のキーワードのひとつだった。実際、インスタグラムで「ワークマン女子」と検索すると、10月15日現在で投稿数は1万4000を超える。
「せっかくSNSで拡散されている言葉ですから、それを店名にしてしまったほうが集客につながると考えたんです」(林さん)
女性向けのアパレル店舗をオープンする場合、言葉の響きが良かったり、店主のこだわりのネーミングをつけたりするのが一般的である。しかし、ワークマンは「SNSで拡散されるため」という理由で、あえて「#ワークマン女子」という店名にしたのである。
今後、「#ワークマン女子」に来店したSNSのユーザーは、写真映えする店内のスポットで撮影をして、インスタグラムやフェイスブックに店名を入力して投稿するはずである。ハッシュタグをつけたくなくても、店名に「#」がつく以上、「#ワークマン女子」と入力するしかない。そうなると、SNS上には「#ワークマン女子」という言葉があふれて、女性のワークマンのウエアの着こなしの写真以外にも、「#ワークマン女子」の店舗情報も、SNSを通じて拡散されることになる。
この戦略は、SNSの本質を理解していなければ実践することのできない、大胆な販促方法と言える。消費者がより有益な商品情報をネットから引き出そうとしているコロナ禍において、SNSの販促を強化するワークマンが優位に立っていることは間違いない。
来店層を分けて、既存店の混雑を解消
ワークマンの3つ目の強みは「協力者を大切にする」である。
取材前、「#ワークマン女子」を展開することによって、既存のワークマンの店舗の売り上げに大きな影響が出るのではないかと心配していた。特にワークマンはフランチャイズ方式を採っているため、今まで作業服の販売で売り上げを立ててきた店舗にとって、顧客が奪われるリスクが出てくるのではないかと思っていた。
「実は『#ワークマン女子』の展開は、既存店の混雑解消の目的もあるんです」
林さんいわく、作業服中心の『ワークマン』と、アウトドアウエアの比率が高い『ワークマンPlus』は、土日になると一部の店舗で大混雑することが問題になっていた。作業服を買いに来た人が駐車場に入れなかったり、男性ばかりのお店に女性客が入りづらかったり、顧客のすみ分けが課題となっていた。
「『#ワークマン女子』は作業服、作業用品を扱わない一般客向けだけの店舗です。コンセプトを変えることで、お客さまを分散させ、ゆったりと買い物をしていただきたいと考えました」(林さん)
しかも、「#ワークマン女子」で売られている商品はワークマンでもワークマンPlusでも購入することが可能だ。つまり、既存の店舗がお客さまを取られてしまう心配はない。
別のコンセプトで店舗を作り、バッティングさせないことで、販売パートナーであるフランチャイズ店を守る。今までワークマンの売り上げを支えてきてくれた店舗を大切にしたいという思いが垣間見られる。