YouTubeチャンネル『大愚和尚の一問一答』が人気の大愚元勝氏は、三法人七事業の経営者でもあるという異色の僧侶だ。「仏教は仕事や実生活にも役立つ、世界最高の知恵だ」という考えから、仏教で人生を変える方法を配信している。「嫌いな人への嫌悪感は、慈しみに変えられる」と説く大愚和尚の真意とは――。

※本稿は、大愚元勝『人生が確実に変わる 大愚和尚の答え 一問一答公式』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

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写真=iStock.com/Tero Vesalainen
※写真はイメージです

心ないクレームに「愛語」が効く

生きていれば、心ない言葉を投げかけられることもあるでしょう。

仕事中に「さっさとしろ、こちらは客だ」という大きな態度を取られることもあります。日頃のストレスをぶつけるかのように、横柄な物言いをする人もいるでしょう。

たとえこちらに非がなくても、頭を下げなければならないことは少なくありません。それが度重なれば、さすがに傷つくし、嫌になっちゃいますよね。

「なぜ、そこまで言われなきゃいけないんだ」と怒りが湧いてくるかもしれません。こんなときに役立つのが、道元禅師の「愛語あいご」です。

愛語とは相手が耳にして気持ち良い言葉を使うことなのですが、これは上辺の言葉遣いの話ではありません。愛語の使い方や愛語の持つ力をきちんと理解して話せば、自分の心持ちも、周りの人との関係も改善していくという教えです。

「徳がない人はかわいそうと憐みなさい」

愛語とは衆生しゅじょうを見るに、先ず慈愛の心を発し、顧愛こあいの言語を施すなり、慈念衆生猶如赤子懐じねんしゅじょうゆうにょしゃくしおもいを蓄えて言語するは愛語なり、徳あるはむべし、徳なきは憐れむべし、怨敵おんてきを降伏し、君子を和睦ならしむること愛語を根本とするなり。

これは道元禅師の書かれた『正法眼蔵しょうぼうげんぞう』に登場する一節です。現代語訳すると、こんな意味です。

愛語とは誰に対してもまず慈愛の心を持ち、愛のある言葉を発することだ。
命あるすべての人に、親が赤ちゃんを慈しむような愛を持って言葉を発しなさい。
徳のある人に出会ったら讃え、徳がない人に出会ったらかわいそうだと憐れみなさい。
敵の怨みを解きほぐすのも、人格者にその善き心を自覚させるのも、愛語の力なのだ。

私はこの一節がすごく好きで、法要でこのお経を読むたびに、「自分もちゃんと愛語を使えているか」と再認識します。