なぜ毎年「シケ対」は組織され続けるのか
シケ対は、例年、入学直後の4月頭に行われる「オリ合宿」というクラス旅行中に組織される。これは、一学年上のクラスの先輩たち(「上(うえ)クラ」と呼ばれる)によって企画される行事で、関東近郊で1泊2日の懇親旅行に出掛けるというもの。参加は任意なのだが、毎年新入生のほとんどが参加する。
全国津々浦々から東大に集まった若者たちは、オリ合宿中に、これから一緒に必修の講義を受けるクラスメートたちと親睦を深め、先輩たちから東大生として新たな生活をはじめるために必要な情報を教えてもらう。そしてこのとき、たいていは夜のコンパ中に、先輩たちに言われるままにシケ対を組織するのだ。
不思議なことに、ほぼすべての新入生はオリ合宿に参加するし、一通りの希望を募った後、余りをくじ引きやジャンケンで割り振ったシケ対も、その任を滞りなくこなす。
学生の本分をまっとうし、独力で真面目に勉強しようと考える人には、シケ対は不要である。進振りにしても、突き詰めていけば同級生との競い合いになるのだから、シケプリの作成は敵に塩を送る行為となるだろう。
任意なのに「シケプリは配布されない」事態は起きない
極端な話をすれば、試験直前に担当者がデタラメな内容のシケプリをばらまけば、シケプリ頼りの試験対策をする連中を軒並み進振りレースから脱落させることだってできる。
それなのに、担当者がその任を投げ出してシケプリが配布されない、などということはめったに起きない。まれに担当した学生が心の病などを患い大学に出てこなくなることもあるが、そんな場合でも誰かしらがしっかりとフォローに回り、ほかのクラスのシケプリなり過去のシケプリなどを入手して配布してくれる。
僕は教養課程のころ総勢70名の大所帯に所属していた。シケ対によって全員がなんらかの講義の担当に割り当てられていたが、誰一人としてシケプリの作成をボイコットするものはいなかった。期末試験期間にそれを知ったとき、東大生の責任感の強さというものに驚きと感動を覚えたものだ。
シケ対というシステムがいつはじまったのか、その起源の正確なところは定かでないが、あるとき、所属していたサークルのOB会で50代の先輩に聞いてみたところ、今から30年前にはすでに存在していたらしい。