11月のアメリカ大統領選挙が迫ってきた。ドナルド・トランプ氏とジョー・バイデン氏、日本にとってはどちらが当選したほうが得なのか。徳島文理大学の八幡和郎教授は「バイデン氏のほうが安心といえる。トランプ氏の気まぐれによる被害を日本が受けてこなかったのは、安倍前首相がいてこそだった」という——。
※本稿は、八幡和郎『アメリカ大統領史 100の真実と嘘』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。
両者で分かれる外交政策
トランプ大統領(共和党)が勝利し続投するのと、バイデン前副大統領(民主党)が勝利し来年1月半ばから政権につくのとでは、世界とアメリカにとってはどう違うのでしょうか。トランプは、再選だけが目的で、価値観とはあまり関係ない取引の集積でしたから、再選された場合のトランプが、なにを目標に行動するかは未知数です。
また、トランプ政権前半は、上下両院ともに共和党優位でしたが、後半は下院は民主党が多数でした。今回は両院ともに民主党が伸びそうですが、多数派になるかは不明です。
トランプ時代は党議拘束なしに投票するという伝統が廃れて、ほぼ共和・民主に分かれて投票していましたが、バイデンが大統領になったときにどうなるか見当が付きません。そうした不透明な状況ですが、両候補の発言から、政策の違いを考えてみましょう。
外交全般について、バイデンは伝統的な同盟国との協調重視を取り戻すとしています。
イランの核合意では、オバマ政権の政策を引き継ぎ、アメリカも復帰する考えを示し、ロシアとの核軍縮条約「新START」の延長を目指すでしょう。
トランプは、軍事同盟の安定性に無頓着で、同盟国に米軍駐留経費の増額を求めていますが、バイデンはNATOに好意的でしょうし、日本や韓国から撤兵すると脅すこともなくなるでしょう。ただ、アメリカ自身の軍事力増強に不熱心でしょうし、自国の財政難から同盟国の負担増強要求に戻ってくる恐れがあります。