ほかには「飲料会社や食品会社のネット会員になると、試供品情報がメール送付されてくることもあるので、ひいきのメーカーがあれば登録しておくのも手。とくにビール会社は試供品情報も多いですよ」と丸山氏は言う。

ところで試供品の無料配布は、配布元の企業にとってペイするものなのだろうか。前出のモラタメを例に取ると、サービスを開始した2006年以降の約3年間で、参加企業数、試供品数とも約10倍に伸びているという。企業がこぞって試供品配布に走り始めたのはなぜか。

「要因としてまず、店頭に並ぶ商品が増えすぎて、消費者が新製品を手に取るハードルが高くなったこと。企業としてはとにかく一度試してほしい、試す機会をつくることでその後の実売につなげたいと考えているのでしょう。もう一つはネットに絡めて試供品を配布すれば、消費者の生の声をリアルタイムで拾えるという利点。試供品の使用感を綴ったブログや掲示板の書き込みは、『本音』に加えて、自社製品だけでなく他社製品がどうとらえられているかもわかるので、商品開発で参考にしやすいようです」(モラタメを運営するドゥ・ハウス広報部・宮崎智子氏)

ちなみに試供品を提供する企業がモラタメに自社製品を掲載する場合、支払う掲載料は64万円から。これで宣伝とリサーチができると考えれば、決して高い出費ではない。

このように無料でもらえる試供品の裏には、合理性のあるビジネスモデルがあったわけだが、インターネット上に散在する試供品情報の中にはときに首を傾げたくなるものもある。

「なかには試供品を入り口にした悪徳商法ではないかと疑われるものもあります。節約のために始めた試供品の取り寄せが“タダほど高いものはない”という結果にならないよう、内容は冷静に見極めるべき。またメールアドレスを登録するならフリーアドレスを使うのが鉄則です」と丸山氏は注意を喚起する。とはいえ、身元の確かな会社が配布する試供品ならまず心配ないので、一度試してみてはどうだろう。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=石田純子)