テレビ会議で効率よくやりとりができる

――テレワークで生産性は高まったか。

【近藤】生産性が上がる面とそうでない面がある。たとえば若手が資料を作成する際は、作業に集中できていい。しかし、先輩からの指摘が入らないため、一部の資料は平準的で印象の弱いものになり、修正が必要になったものもある。営業も、すでにリレーションができているお客様とはテレビ会議で効率よくやりとりができるが、まだ信頼関係が築けていないお客様とは難しい。生産性以外にも、社員のエンゲージメントや教育、お客様の満足度など、見えていないところがある。状況を調べて、これから評価をするところだ。

課題は見つかっても、ビフォーコロナに戻るつもりはない。20年度から始まった中期経営計画を立案する際、5年後の世界を想定した。そこにはリモートワークやデジタル化といったワードが入っていて、コロナで一気に加速化できた。メールでの電子交付契約は19年度一日平均約500件だったが、20年4月以降は2000件弱に増えている。さらによくする方法を考えたい。

――資産運用ビジネスへのシフトを進めているが、コロナの影響は?

【近藤】リーマンショックのときと同じく、一時的に分散が利かない状況だ。ただ、いまは人生100年時代。ポートフォリオの分散だけでなく、期間の分散も重要だ。コロナで30年、50年という長いタームで運用を考えるいいきっかけになったのではないか。

――銀行出身のトップが続いた。7年ぶりの生え抜き社長だ。

【近藤】出自にこだわるつもりはない。メガバンクグループの証券会社として銀行との連携が強化されて、組織再編で総合証券化も進んだ。その強みを引き続き伸ばす一方で、証券会社として、資本市場の健全な発展に役立つ経営をしていきたい。

名古屋で課長になったとき、自分が正当に評価されていない気がして、他業界への転職を考えた。東京の先輩に挨拶するために新幹線に乗ったが、いつのまにか投資信託の本を開いていた。それに気づいて、自分はこの仕事が本当に好きなのだと悟った。証券業界への思いはいまも同じだ。

(構成=村上 敬 撮影=今村拓馬)
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