アナリスト分析〈外食業界〉●澤田遼太郎(エース経済研究所アナリスト)

お店という箱から抜け出せるかが鍵

コロナ禍で激震に見舞われた外食業界の中で、好調を維持しているのがファストフードです。以前からテイクアウト比率が高かった業態だけに、日本マクドナルドや日本KFCが善戦したのは当然といえるでしょう。

KFCの場合、お得な500円ランチの牽引ぶりが喧伝されることが多いものの、その点には私は少し懐疑的です。同業他社を含めて割安なセット商品はあまたあり、価格訴求そのものより、テレビCMを中心に日常使いを繰り返しアピールした、マーケティング戦略の転換がより効いたのではないかと考えます。ともあれ、ファストフードはこのウィズコロナ時代、しばらくは堅調に推移するでしょう。

一方、厳しいのが居酒屋チェーンとファミレスです。前者は、友人と、あるいは会社の同僚や上司、部下と連れ立って利用するシーンが多いわけですが、ソーシャルディスタンス、あるいはアクリル板やビニールの垂れ幕で仕切り、入店客数に制限があると、店側も採算的に厳しいですし、利用者側も本来の居酒屋の使い方とはかけ離れてしまいます。後者のファミレスは家族利用が中心ですが、コロナ禍が沈静化していない現状では、世間体を気にして行くことに二の足を踏む親御さんも少なくありません。オフィス街の飲食店も、当面はどれだけテイクアウトやデリバリーでしのげるかにかかってきます。

外食産業は、当面はアフターコロナの時期が来ても、コロナ前に比べて最大でも8~9割、居酒屋のような業態ではさらに厳しい前提で経営を考えていかねばならないと思います。お店という箱でのビジネスに限界がある以上、イートイン以外の模索が続いていきます。たとえば郊外型回転寿司を展開する銚子丸では、以前から寿司職人を老人介護施設や学校などに派遣する、出張回転寿司を実施してきましたが、今後は個人宅にも出張するサービスを強化していくでしょう。テイクアウト、デリバリー、ドライブスルー等、イートイン以外の販売形態をどう拡大できるか、やはりそこが鍵ですね。

中嶋祐子(なかじま・ゆうこ)
日本ケンタッキー・フライド・チキン マーケティング本部長
広告代理店を経て、2012年にKFCブランドのフランチャイザーであるヤム・ブランズのアジア部門で6年間日本を中心としたアジアマーケットのブランドマネジメントを担当。日本KFCには18年4月に入社。
 

新井晶子(あらい・あきこ)
日本ケンタッキー・フライド・チキン 広報CSR部長 運営本部付 ブランド戦略担当
KFCの親会社である三菱商事の出身で、同社の子会社、三菱食品を経て2018年5月、KFCに着任。三菱食品における社内融和や戦略再構築の経験を活かし、現在ブランド戦略を担当。
 

澤田遼太郎
エース経済研究所アナリスト
 
(撮影=門間新弥)
【関連記事】
奇策! サイゼリヤの「1円値上げ」が与えた想定外すぎる衝撃
「大戸屋vsコロワイド」創業者の長男が"うちの会社"として前に出ることの違和感
ビール4社は「アサヒの一人負け」…キリンとの「自粛ダメージ」の決定的な差
目も当てられない悲惨な末路…「ペイペイの猛毒」にやられたキャッシュレス企業
「ジーンズ強化が完全に裏目」トレンドを読み間違えたライトオンの絶不調