500円ランチが想定を超えるヒット

中嶋も、500円ランチが想定を超えるヒットを飛ばしたことに対し、「多くのお客様からご支持をいただけたのは、KFCは高い、あるいは個食向けでないと思われていた裏返しであり、それまで昼食の選択肢に入っていなかったということだと思います」と言う。

500円ランチをきっかけに、ケンタッキーのイメージが変化した。
500円ランチをきっかけに、ケンタッキーのイメージが変化した。

テレビCMで広くランチセットの認知度を上げた後、SNSやアプリなどのデジタルツールで購買行動分析や販促を手がけ、500円ランチが浸透したことから、20年1月以降、期間限定から定番商品へと切り替えている。その勢いを駆って今春、コロナ禍での難しい商戦に向き合ったわけだが、同時期ははからずも、従来のKFCの強みを再認識することにもなった。

「グループやファミリー向け、テイクアウトの夕食、あるいは週末需要といったKFCのもともとの強みを、外出自粛の中で改めて感じました」(中嶋)

「海外のKFCに比べ、日本のKFCにおけるオリジナルチキンの販売比率は高く、店舗で取り組んできたオリジナルチキンの調理技術の磨き上げという原点回帰の取り組みも、結果的にお客様にご評価いただけたのではないかと思います」(新井)

以前から強かった夕食、家族ニーズへの対応力に、ここ2年強化してきた昼食、個食ニーズへの対応力が大きく上乗せされた構図だが、それは20年4月、20年5月の前年同月比の客数からも見てとれる。両月、日本マクドナルドとモスフードサービスは日本KFC同様、客単価が大幅に上昇した一方で、客数は15%~20%減となった。複数人数分のテイクアウトやデリバリー、ドライブスルーの利用が上昇したことで客単価は上昇したものの、イートインの客数が落ちたからだ。

この数字が、ハンバーガーチェーンは個食需要に強い特性を浮き彫りにした一方、日本KFCは客数も20年4月に107.3%、20年5月も106.5%と上昇、テイクアウト需要が高く、個食、家族向けニーズの両方を摑んでいることがうかがえる。

「客数の伸びしろはまだあります。どのような客層に対してアプローチしていくかという点で、まだ改善の余地は大きいと考えています」

中嶋はこう語り、さらなる客数アップに照準を定める。一方、新井が目指すのはKFCがこだわり続ける部分の認知度向上だ。

「オリジナルチキンの素材には徹底的にこだわっており、全量、国内のKFC登録飼育農場で、独自に開発したハーブ飼料を与えて飼育いただいています。贅沢に中雛(ひな鳥)を使い、お店で生の鶏肉の粉付けからすべて手作り。ですが、その認知率は国内産鶏のみ使用という点でまだ6割ですし、手作りについても5割でしかありません。また、厨房スタッフ全員に“チキンスペシャリスト”というKFC独自の調理認定資格の取得を義務付け、品質へのこだわりをさらに磨いています。サービスや品質面でのブランド力も、より向上させていきたい」

7月4日はKFCの創業日で、節目の50周年を迎えた。次の100周年に向け、上げ潮のKFCは今後、どんな打ち手を繰り出していくのか注目したい。(文中敬称略)

過去27年間で最高売り上げを記録