「本当に割引対象」? フロントでクレームも

<Go To トラベルに対応する宿泊機関で起きていること>
・手続きスキームが複雑で難解すぎるため、予約時点で利用者が不安にさらされる
・感染対策に加えて登録申請、宿泊証明書作成などの手間が増え、スタッフの業務が増加
・割引対象か否かが不明瞭のため、チェックアウトの際トラブルに
・割引可否や手続きの問い合わせ、クレームが増えてフロントスタッフが疲弊

27日からは、旅行代理店経由でのキャンペーン対象予約の申し込みが始まったことで、フロントのスタッフが利用客に対するルールそのものの説明に追われる事態は徐々に軽減されると思われる。しかし、観光庁が公表する100件以上もある「よくある質問」に目を通したり、突然導入された「宿への直接予約に対する割引処理」に必要な新規サイト「ステイナビ」への加入に迫られたりと、宿の運営者らは日常業務とは違った新たな負担に追われる状況となっている。

「足を引っ張る政策でしかない」

赤羽国交相は14日、キャンペーン参加の業者に宿泊客への検温などの感染対策を義務づけると明らかにした。

国交省によると、▽受け付けに仕切り板をつける、▽宿泊客全員に検温する、▽風呂や食堂などの共用施設では人数制限や時間制限をする、▽ビュッフェ形式の食事は個別提供するなどの感染防止策を義務づけ、国交省が確認して宿泊業者を認める。(朝日新聞デジタル、7月14日

非常に短い文で書かれているが、これだけのことを宿泊機関がやろうとすると、スペースや人員的に困難だったり、行ったにしてもコスト増は避けられない。それでも、ほとんどの宿が「できる限りの感染対策をしている」と前向きな答えを述べている。

しかし、あるホテルオーナーは筆者にこんな窮状を訴えてきた。

「旅行会社などから『貴施設での感染対策を教えてほしい』という趣旨の調査の電話が鳴りやまない。たった数日間に200回以上そんな連絡を受けた」

感染対策は、一般顧客がホテル選びをする際に重要なポイントなので、そのホテルでは「必要と思われる情報は全てウェブサイトに毎日アップデートしている」というのだが、そうした努力は無視され、あらゆるところから直接電話がかかってくるのだという。

なぜ電話が200回などというとんでもない本数になったのか。かけてくる相手は地元の市町村や県の観光担当、保健担当、そして観光振興の外郭団体などで、中央官庁の担当からの電話もあった。これに加えて大学の研究室や、興味本位で聞いてくる企業からも質問が寄せられたという。

「同じ旅行会社なのに異なる部門、支店から同じ趣旨の電話がきた。ここまで手間がかかると、もはやGo To トラベルは支援策ではなく、足を引っ張る政策でしかない」と現状を憂う。