野菜や果物を育てるには肥料が必要だといわれる。だが枝を縛って、垂直に立てれば、肥料を与えなくても、収穫量や味が劇的によくなるという栽培法がある。この常識破りの栽培法「道法スタイル」を考案した道法正徳さんは「逆転の発想です」と話す——。

収穫激増、野菜・果実の枝を「垂直に立てる」常識破りの“道法スタイル”

今年6月、自分史上最高においしいパイナップルに出会った。

台湾のパイナップルだ。完熟していて香りがよく、甘みがとても強い。そしてただ甘いだけでなく、パイナップル特有の、ツンツンした刺激もほとんど感じない。味が調っていて、食べやすいのだ。

「道法スタイル」のパイナップル(筆者撮影)
「道法スタイル」のパイナップル(筆者撮影)

ラベルにおじさんの顔がついている。「Mr.DOHO」……ミスター・ドホ? おじさんが気になり、「Mr.DOHO パイナップル」でググってみた。道法正徳(どうほう・まさのり)さんという方らしい。その道法氏が監修した家庭菜園の本が出ているというので、書店に探しに行ってみた。

道法スタイル 野菜の垂直仕立て栽培』(道法正徳:監修/学研プラス)は、家庭菜園のガイド本コーナーで、ひときわ異彩を放っていた。

肥料も農薬も使わず、野菜の枝を「縛って」「垂直に立てる」ことで植物ホルモンを活性化し、収穫量と味をよくするという、新発想の栽培法だという。もともと家庭菜園誌『野菜だより』の連載記事のひとつにすぎなかったが、連載が開始されるや、そのシンプルな理論と実践のしやすさ、そして確かな実績が読者の大きな反響を呼び、連載終了後に書籍化された。

考案者の道法正徳氏(67)は、JA広島果実連の技術指導員としてキャリアをスタートさせた、果樹や野菜の自然栽培のプロである。現在は独立し、広島を拠点に国内外の現場を飛び回る道法氏に話を聞いた。

道法正徳氏
写真=本人提供
道法正徳氏