私は、日本に「危機に備える」という風潮がないことを反省するいい機会だったと考えます。この先も今回のような非常事態は起こりうるわけで、そのときにきちんと強い統制をしないと、国民全員が困ることになります。

コロナ検証を日本はするか否か

日本は「物事を検証する」という行為をほとんどやっていません。一例として、バブル経済についての検証が挙げられます。バブルはなぜ起こったのか、バブル後の経済政策の良かったところと反省するべきところは何だったのか、などのあぶり出しを本来はやるべきだったのですが、行いませんでした。例外的に、日本は1回だけ検証を行ったことがあります。東日本大震災のときの福島第一原発事故についてです。それは、事故後に民主党から自民党に政権が代わったという理由もあります。検証というのは誰かの責任を問いただすことなので、与党はみんな尻込みします。だから、こうしたことは野党が言い出さないと前に進みません。

これと同じように、新型コロナについても検証を行うべきだと思います。国会が調査権限を与えた特別の専門家委員会をつくるのです。政府が自分のことを調査・検証しても限界があります。ですから、独立しており、かつ調査権限を持っている組織が必要です。与党はなかなか言い出しにくいですから、野党の存在が試されるところですが、今は野党の力があまりに弱すぎます。

20年6月14日現在、日本の新型コロナ感染者における死者数の割合は5%程度で、感染者の約20人に1人が亡くなっているという計算です。感染するとかなりの高い割合で亡くなります。

この理由としては、PCR検査数が圧倒的に少ないということが挙げられると思っています。検査がなかなか受けられない状況で、新型コロナの感染発見が遅れ、重篤化してしまうのです。

PCR検査数の多いシンガポールでは、感染した人が亡くなる比率は0.1%、100人に1人なのです。シンガポールの人口当たりの死亡率は日本の3分の2ぐらいに抑え込まれていますが、人口当たりの感染者の数は日本の実に70倍です。それだけたくさんPCR検査を行って、重篤化する前に感染者を発見できたということでしょう。

日本でPCR検査数が少ないのは、なぜなのか。安倍晋三首相は伸びない検査件数について「目詰まり」と表現しましたが、より具体的な説明が求められるでしょう。この点でメディアなどでは霞が関の官僚を批判する声がよく聞かれます。官僚を批判すれば国民の溜飲は下がるかもしれませんが、今の官僚を全員辞めさせられることなど、できません。だからこそ、政治家のリーダーシップが必要です。

悲劇的に少ない、日本のPCR検査数