面倒くさがり屋さんのための動画

無料のSNSから収益を上げる方法は、主に2つあります。1つは自分の撮る動画内で商品を紹介するなどして、企業から紹介料をもらうこと。もう1つは動画に広告を付けることで、動画の再生時間に応じて広告収入を得る方法です。深井君がTwitterを始めたのは、2019年の夏頃。その半年後にYouTubeにたどり着いたのは、セールスが苦手な深井君にとって、動画広告による収益化のほうが取り組みやすかったことが挙げられます。

深井君がYouTubeを始めた当時、すでにストレッチをウリにしている人気YouTuberは存在していました。しかし、彼らの多くはパーソナルトレーナーか理学療法士。つまり、本格派のストレッチ動画が彼らの持ち味だったため、家でもトレーニングをしたいトレーニングマニア向けのモノでした。深井君も最初は彼らにならって、筋トレ好きのトレーナーを装っていました。しかし「やっているうちに、違和感を覚えた」といいます。

実際に、お店でお客さんと接している時に、「家でもやってくださいね」とマニュアルを渡しても、家で自主トレをやってくる人は、ほとんどいませんでした。「自主的にトレーニングをすることが前提になっているけれど、本当はやらない人のほうが多いのでは」と思った深井君は、「ダメだったら消せばいい」と覚悟を決めて、「トレーニングなんか、本当はやりたくない面倒くさがり屋さんのための動画」に切り替えました。すると、「やりたいけれども続かない」「自主トレできない」といった人たちの心をつかんだのです。

ビッグキーワード×ニッチで差別化する

ここに、他人との差別化をするための秘訣があります。過当競争が起きている業界で、差別化する方法とは「ビッグキーワード×ニッチ」です。別の言い方をするならば、「すでにあるものと、ないものを掛け合わせる」こと。

「すでにあるもの(ビッグキーワード)」とは、この事例ではストレッチのこと。すでに認知されているもの、成長している分野、世間で受け入れられていて需要の多いマーケットのことです。そこに、ニッチ(まだないもの、希少性)を掛け合わせます。この“ニッチ”というのは、自分の強みに関係していることでなくてはなりません。

実は、深井君は弊社に来る前は、ラーメン屋の店長をしていました。最初はお客さんとしてストレッチを受けにきた時に、その技術に惚れ込み、弊社に入社したわけですが、たとえその当時に、「ズボラストレッチ」のYouTubeチャンネルの構想を思いついたとしても、実現は不可能だったでしょう。入社後、10年近くもストレッチと向き合ってきたからこそ、できたことなのです。

あなたの技術がその業界No.1である必要はありません。しかし、受け手があなたに専門性を認めるだけの何かは必要です。