不器用なダメ社員が、一躍人気YouTuberに

しかし、個人が少ない時間の中でたくさんのお金を稼ごうと思ったら、基本的には時間単価の高い仕事をするしかありません。では、高単価が取れる仕事が何かというと、「技術力」か「オリジナリティがあるもの」になります。

オリジナリティで勝負していて、誰でも知っている仕事の1つにYouTuberがあります。無料動画サイトYouTubeの月間視聴者数は世界で20億人といわれ、サイバーエージェントの子会社Cyber Nowによると、国内YouTuberの市場規模は2022年には579億円になるとの予測を発表しています(日経新聞Web版、2020年1月13日)。しかし、市場自体は伸びているとはいえ、YouTuber自体は参入障壁が低いため、日々プレイヤーも増えています。

そんな中にあって、わずか半年余りで登録者数約15万人というYouTubeの人気チャンネルを持つに至ったYouTuberがいます。私がビジネスオーナーをしている会社の社員だった深井裕樹君です。「社員だった」と過去形になっているわけは、当社公認の副業YouTuberとして、個人事業として十分な収益を上げるようになってきたため、子会社として分社化し、当人をその会社の社長にすえたからです。

「事業化を成功させ、社長になるような人であれば、もともと優秀な人だったに違いない」と思われる方もいるかもしれません。しかし深井君は、どちらかというと不器用で、むしろ人心掌握は苦手です。

突出した技術はないが行動力があるオタク肌

深井君は、私の会社に入社後、トレーナーとしてスタートしましたが、技術も人並みはずれて突出していたわけではありません。ただ、周囲の目も気にせず突き詰める行動力があるオタク肌の社員でした。後に店長選抜に立候補するも、2回続けて落選。3回目にして、晴れて店長になりましたが、自店スタッフとの人間関係の構築が上手くいかず、1年後には自ら店長を降りるという挫折も経験しました。

弊社では、新規顧客の獲得には、有料の新規客獲得サイトも利用しています。サイト自体は多くの会社が使っているありふれたものですが、深井君は店長時代に覚えたネットマーケティングによって、余分な費用をかけずに店の新規顧客を約1.5倍に増やすという快挙を成し遂げました。

「だったら、このノウハウを集客で困っている他社に販売してはどうか?」と外販をやらせてみましたが、半年で撤退。決裁権者へのB to Bセールスには向いていませんでした。しかし、その後、それまでの経験をTwitterに応用し、フォロワー獲得に成功したことから、他のSNSにも進出。個人の名前で始めたYouTubeチャンネルの「ズボラストレッチ」で人気に火が付いたのです。