首都圏を襲う火災、そして水害の恐怖

新型コロナウイルスで疲弊した東京が、首都直下地震に襲われたらどうなるでしょう。都市機能が壊滅するぐらいでは済まないと思います。

森永卓郎『年収200万円でもたのしく暮らせます コロナ恐慌を生き抜く経済』(PHP研究所)

首都直下地震対策検討ワーキンググループが出した最終報告では、都心部より、そこに隣接した住宅地域の火災発生による甚大な被害が想定されています。現在、世帯が多く暮らす住宅密集地帯は火の海になり、最大で約61万棟が焼失。東京の市街地が事実上「消える」ということです。

東京の新型コロナウイルスの感染者数も、専門家によっては60万人以上いるのではないかといわれますが、大地震が起きれば、それ以上の被害が想定されます。

1996年以降、24年も転入超過が続き、一極集中が加速化する東京を、新型コロナウイルスと首都直下地震が破壊するのではないでしょうか。それを前提に、私たちはライフスタイルを考えていかなくてはなりません。

危険な場所に人を集中させたことが誤り

さらに、大型台風で河川が決壊するおそれもあります。2019年10月に日本列島に上陸した台風19号は、東海、関東地方を中心に激しい雨を長時間降らせ、河川の氾濫(はんらん)や土砂災害など広範囲に大きな傷痕を残しました。大型台風が今後も日本列島を襲う可能性は十分考えられます。そして、都心を直撃すれば、その被害は甚大なものになるでしょう。

前出の中央防災会議の「大規模水害対策に関する専門調査会」は、2008年に荒川の洪水氾濫時の被害想定を発表しました。それによると、200年に1度の発生確率の洪水により墨田区墨田地先で堤防が決壊し、避難率40%の場合、排水施設が稼働しないケースで死者数は約2100人としています。さらに3割増の洪水量であれば、死者数は約4500人にものぼると予測します。こうした危険な場所に人を集中させたこと自体が、国土政策として誤りだったといえます。

大阪も同じです。日本のほとんどの大都市は沿岸部にあります。千代田区の日比谷付近も江戸開府の頃に埋め立てられた土地で、そもそも地盤がよくないのです。それなのに、都心部に企業が本社を構え、商業施設や飲食店ができ、人が集まっているのです。

危ないと言われても都心に住んでしまう心理は、都市機能、金融など、あらゆるインフラが都心に集中していることが主因です。そうした目先の欲に目がくらみ、企業も個人も客観的、総合的に将来展望を描けなかったということに尽きるでしょう。

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