悪徳業者、詐欺……投資家を襲う罠
【東】とんでもない話がありまして。勤務中にある方から、「東京都江東区に利回り30%の物件がある。即決するなら売るので、すぐ手付金を振り込んでくれ」という電話をもらったんです。確かにまたとない好条件ですが、ちょっと怪しい。「勤務中だし、ちょっと待ってください」と伝えておき、夕方になって急いで物件を見にいったら、驚いたことに、その部屋がないんです。確か「509」号室を紹介されたのに、そのマンションには「508」までしかない(笑)。じつはこれ、手付金詐欺だったんですね。条件に目がくらんで即決でお金を振り込まなくて助かりました。ちなみにその詐欺師ですが、数年前にばったり繁華街で顔を合わせまして。そのときも勤務中だったのですが、思わず胸ぐらをつかんでしまいました。
【編集部】それはすさまじい経験ですね。なにより引っかからなくてよかったです。
【東】悪徳業者にカモにされたというケースも聞きます。ある相談者に聞くと、築10年の区分所有の3戸を30年のフルローンで売ってくれたのですが、なんと利回りは6~7%程度。さらに自宅を抵当に入れられて……。自己資金ゼロとはいえ、あまりにも悪条件です。こうなるとほかで好条件の物件を買って、利回りを相殺させるしか解決方法はありません。
ほかにも、利回りは13~14%もあるのですが、築30~40年の2物件、しかもひとつは再建築不可のものを買ったという相談者もいました。なんとかキャッシュフローは出ているものの、こういった物件は転売できません。建物としても寿命が残り短く、投資という面ではハイリスクです。さらにこの方は、物件の購入資金を消費者金融から賄っていて、これだと次に物件が欲しくなっても、金融機関は絶対に貸してくれません。
【編集部】闇雲に買うと危険ですね。山川さんのお話にもありましたが、不勉強なまま始めてしまう方が多いのでしょうか。
【東】やはり、それなりに知識を蓄える必要はあるでしょう。とはいえ、勉強ばかりでも問題です。不動産投資の勉強を10年もしているのに実践経験はゼロという50代の相談者がいたのですが、これでは単なる頭でっかち。勉強を重ねたなら「脳内投資」に明け暮れるのではなく、身銭を切ってトライしてほしいですね。
【山】本も読まずセミナーにも参加しない「にわか不動産投資家」のなかには、失敗している人もいると思います。ただしこれは市況云々以前の話ですけどね。
【東】何でも自分でしなければと思い込み、まさしく「大家」になろうとする人がいますが、それも間違いです。首都圏在住のある投資家は、山梨県にある所有物件にインターホンを設置するため、みずから車を走らせたと誇らしげに言うのですが、これこそムダの極み。材料費はもちろん、往復のガソリン代や高速代にどれだけかかるか。それより、現地の管理会社に任せたほうが明らかに安上がりです。そのためにお金を払っているのですから。