障害年金の申請により、過去5年分の障害年金約500万円ももらった
Aさんは長年、就労経験がありませんでしたが、企業で働くことが不安、もしくは困難である人に働く場所を提供している「就労継続支援A型」事業所に3年前に登録して体調がいい時に働き始めました。月収は2万~3万円。これに加え、障害年金が月額約8万円はもらえるようになったので、少しは親に安心を感じてもらえているかもしれない、とAさん自身は考えていました。
また、障害年金の申請により、過去5年分の障害年金(約500万円)をさかのぼってもらったので、大きな金額が普通預金に入っていて、どのように保管しておくのが良いかわからないとのことでした。
Aさん自身、普通預金に大きな金額があると使い込んでしまうところがあるとのことでしたので、「では、目に見えないところに隠しましょう」と伝えしました。具体的には、銀行に預けるのであれば「定額貯金」として、簡単に引き出せないようにする。また、当面そのお金を使わないのであれば、定額貯金より金利がいい個人国債の購入など投資をするという選択肢もあると伝えました。
「実は私、今後やりたい事があります、家を出たいです」
だんだん緊張が解けてきたAさんは、「実は私、今後やりたい事があるのです」「家を出たいのです」と話し始めました。今日一番相談したかったことはこれか、と筆者が感じるほどのまっすぐな視線でした。
家を出たい理由。それは端的に言えば「誰にも干渉されない1人の時間がほしい」ということでした。筆者は言いました。
「その(家を出る)方向で進めて問題ないと思います。まずはやってみないと、どうなるかはわかりません。(家を出ると両親に)宣言して行動して、その後に微調整をしていけばよいのです。万一、行動してしんどくなったら、休みましょう。ご両親は、Aさんの体のこととお金のことが心配です。私はお金のことをしっかりお手伝いします。体のことは医師ではないのでわかりませんが、少しでもつらくなったら言ってください。そこで小休止すれば良いのです」
そのうえで、簡単な家計簿のシミュレーションを提示しました。家賃月3万5000円の賃貸アパートを借りることを想定して試算したので、月の家計で少し赤字になってしまうものの、ちょっとした工夫で成立する可能性は高いと伝えました。
これを聞くと、Aさんはとっても晴れやかな表情になり、「そうします!」と力強く言葉を発しました。