――本や飲食、洋服代にお金をかける理由は何ですか?

北尾 自分に対する投資です。若いときから、少し無理をしても先行投資してきた。前述のマンションを買ったときはローンすなわち“強制貯蓄”でしたが、「毎月、本をこれだけ読むんだ」というような“強制投資”も大切です。

服を買うのもサラリーマンには大切な投資でしょう。無理をしても5着は持って毎日かえたほうがいい。僕はそうしてきました。そのほうが長持ちもする。

ぶら下がり(既製のスーツ)は着ない。体形的にも合いませんので、いつも仕立ててもらいます。生地は英国製。なぜなら背広に関する歴史と伝統が日本とは雲泥の差だからです。いいものを買って長く大切に使う。仕立てるときズボンのウエストは5~6センチ調節できるように特別な工夫をしてもらっています。はけなくなって買い替えるより経済的です。

――サラリーマン時代、部下を連れて飲みに行くような場合、その支払いは?

北尾 全部身銭を切っていました。部下に払わせたり割り勘にしたことは1度もないし、個人的に行くのだから経費で落とさない。いまでも会社の交際費は、ものすごく厳しくしていて、僕自身ほとんど使わない。したがって部下も使わない。

会社の決算後の打ち上げや、新入社員を10人ぐらいずつ連れての飲食のときなども、僕が払います。食に対する基本的な考えは、安くてうまいものがいい。自分が学生時代から通う店が有楽町(東京)にあり、いまでもそこに連れていきます。そういう飲食には身銭を切る。