ギャンブル等依存症問題の状況
厚生労働省が17年に、ギャンブル依存症の実態把握のために実施した調査によると、生涯でギャンブル依存症が疑われる状態になったことがある人は成人の3.6%と推計され、国勢調査のデータに当てはめると約320万人に相当します。直近1年間に依存症が疑われる状態だった人は0.8%で、計算上では約70万人となっています。
ギャンブルにのめり込むことにより、本人およびその家族の日常生活や社会生活に支障を生じさせるのみならず、多重債務や犯罪等の重大な社会問題を生じさせる可能性がある点について以下のデータを見てみます。
「ギャンブル等依存症対策推進基本計画(平成31年4月19日)」のデータによると、17年度に精神保健福祉センターや保健所に寄せられたギャンブル等に関する相談件数は4843件で、PIO‐NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録された借金の問題に関して、ギャンブル等に関連すると思われるものの件数は2万6387件中、535件でした。財務省財務局・財務支局に寄せられた「多重債務」に関する相談中、相談者の借金をしたきっかけが「ギャンブル等」であると判明したものは、5299件中323件。刑法犯の総検挙件数31万6412件中、主たる被疑者の犯行の動機・原因がパチンコ又はギャンブルをすることへの欲求であるものの件数の合計は2570件。保護観察対象者のうち、「ギャンブル等依存対象者」類型に認定された者の数は2万8035名中、1296名。これらは、ギャンブル依存症が多重債務や犯罪につながっている問題点が浮き上がるデータとなっています。
30兆円の産業といわれたパチンコ業界が今
30兆円産業で不況に強いなどと言われてきたパチンコ業界ですが、業界自体は縮小傾向で20兆円規模になっています。縮小傾向と言いつつも、外食産業が約25兆円といったことから考えても、パチンコ業界の20兆円の市場規模は十分に大きいです。法的に運営ができなくなるようなことがない限り、完全になくなることは考えにくいです。
「レジャー白書」によれば、1995年のパチンコ参加人口は約3000万人から現在では900万人台にまで減少しています。ここまでパチンコ人口が減ってしまった背景には、この十数年、パチンコ業界を取り巻く環境が一変したことにあります。ギャンブル依存症が社会問題化し、経営体制のグレーな部分が批判されるようになると、利用者数も減少傾向になりました。また、法改正により、ギャンブル依存症対策として「儲かる遊技台」が規制され、これによって客離れはより顕著になっています。
さらに、今回のコロナの影響で顕著になったのが、パチンコ台の仕入れ代金や光熱費、従業員の給料などの「固定費」が、ほかの業種に比べて高い業界なのです。そのため、休業の要請に応じることで、東京都の場合、協力金として最大で100万円が支払われますが、家賃だけで月に1000万円以上かかる場合もあり、ほとんどの店で大幅な赤字なのです。結果、今回のコロナの影響で、全国で少なくとも85の店が事実上倒産、閉店をしています。