収支のバランスを崩す2つの勘違い
しかし、支出が収入を上回らないようにセーブしていれば、赤字にはならず、貯蓄に回す余裕だってできるはず。それについて、藤川さんは、「高所得層は“2つの勘違い”から収支のバランスを崩しがちなのです」と指摘する。
「勘違いの1つ目は、収入アップに比例して、支出も増やせると考えること。実は、名目上の収入が増えても、手取りはそれほど増えません。累進課税方式なので、税率も上がるからです。最近では、税金や社会保険料の負担も徐々に重くなっているので、手取りはいっそう減る傾向にあります」
2つ目は、「年収が今後も減らない」と思い込んでいること。高度経済成長期なら、給与は右肩上がりで増えたが、今は先行き不透明だ。今回の「コロナショック」の影響次第では、会社の業績が大幅に悪化して、賃金カットもありうる。藤川さんは、「現在の年収を前提に、住宅ローンなどの大きな固定費を抱えてしまうと、年収が下がった場合、たちまち家計が破綻してしまうので危険です」と警鐘を鳴らす。
では、年収1000万世帯が家計を見直し、財政健全化を図るには、どうすればいいのだろうか? 固定費については、「住宅ローンの借り換え」「保険の見直し」といった手をすでに打っている人も多いが、「最近では、子どもの習い事の種類を、減らす親が増えています。中学・高校も、私立ではなく、公立に通わせる高所得層も目立つようになりました」と藤川さんはいう。車も、買い換えを先送りすれば、固定費の削減に役立つ。ほかにも、家計を切り詰められる余地はある。
「携帯電話を、大手通信キャリア以外の格安スマホに変更すれば、通信費が月1万円減るのはザラ。あまり利用していないスポーツクラブを脱会すれば、月1万円程度の会費が浮きます。高所得層の大半は電力の自由化についてノーマークですが、電気代がかかる世帯が多いので新電力にシフトすれば、年1万~2万円をカットできるケースも多いです」(藤川さん)
支出ばかりでなく、「収入増にも目を向けるべき」と藤川さんはアドバイスする。「年収1000万円世帯では、妻が専業主婦というケースが多いのですが、『子どもの教育費の足しに』などと説得して、奥さんにパート勤めに出てもらっては」(同)といったアイデアを、ぜひ参考にしてほしい。
家計の見直し相談センター代表
1993年慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。ファイナンシャルプランナー。15年間で2万世帯を超える家計の見直しを行う。『サラリーマンは2度破産する』など著書多数。