長期にわたる外出自粛要請で、DVの増加が懸念されている。海外ではどのような対策をしているのか。3月17日に外出禁止令を出したフランスでは、その3日後に非常事態下におけるDV対策が打ち出された。在仏ライターの髙崎順子さんは、「フランスはコロナ禍前から、家庭内暴力を注視してきた。非常事態で配慮できるのは、平常時にも配慮できている案件しかない」と語る——。
フランスの地図
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薬局やスーパーから警察に通報できるようになった

3月16日のエマニュエル・マクロン大統領のテレビ演説で、翌日正午からの外出禁止令が公布されたフランス。その3日前に全国休校令、2日前に一部商業施設(レストラン、ナイトクラブなど)の休業令が出されてはいたが、多くの国民にとっては「まさか、そこまで」の事態だった。明日からの生活はどうなるのか? 仕事は、買い物は、保育は、介護は、通院は? 「家を出られない」という前代未聞の行動制限を前に、社会全体に、当惑と不安が入り乱れた。

政府のリアクションは早く、休業を余儀なくされた人々の所得補塡ほてんや企業への雇用維持支援、自営業者への助成金など、補償策の詳細が続々と発表された。テレビのニュース番組はコロナ禍特番となり、ラジオも新聞もネットメディアも、患者数の推移と状況解説で埋まった。

そんな中、外出禁止令発令3日後の3月20日、トップニュースのトピックが変わった。外出禁止のあおりを受けた「家庭内暴力(DV)増加の懸念」が一斉に報じられ、非常事態下での通報方法が特集されたのだ。

フランスには従来の全国統一DV相談ダイヤルがあるが、相談員も外出禁止で勤務ができず、ダイヤルは一時、機能不全状態に陥った。そこで政府は急遽、薬局やスーパーマーケットなど営業を許可された商店に通報窓口機能を与え、携帯電話のショートメール、政府のDV対策公式サイト経由でも、警察直通の通報を可能にした。この期間の外出には申請書の作成・持参が必須だが、家庭内暴力から逃れ警察に駆け込む際には必要ないことも、繰り返し報道された。

それらの報道では児童虐待についても同時に触れられ、判で押したように、類似の言説が添えられた。「家庭はすべての人にとって、安全な場所とは限らない」と。