日本人が今回反省すべきこと

私は、日本に「非常時に備える」という風潮がないことを反省するいい機会だと思います。この先も今回のような非常事態は起こりうるわけで、そのときにきちんと強い統制をしないと国民全員が困ることになります。AIの台頭も何年も前から言われていることですが、一体どれくらいの国民が危機意識を持って備えているでしょうか。

東京五輪延期
時事通信フォト=写真

いま、国民一人一人ができることは、まず第一に感染を拡大させないために不要な外出を控えること。そして、この騒動をきっかけに、遠隔で物事を行うためのデジタル技術を徹底的に活用することです。いままでそういったものを使ったことがない人も、相対的に時間があるいまの時期に習得していくことが大事だと思います。

いまは暗いニュースが続いていますが、アフターコロナのことを見据えてきちんとデジタルシフトしておけば、世界の先端に立てる可能性はあります。

幸い、日本は諸外国と比べて、新型コロナによる死者数を少なく抑え込めています。20年4月22日の時点での各国の人口1億人あたりの死者数は、中国332人、韓国460人、アメリカ1万3824人、イタリア4万834人であるのに対して日本は222人にとどまっています。一人一人が元気で働くことが経済の源ですから、このまま死者数を抑え続けることができれば、日本の経済は比較的明るいといえるでしょう。場合によっては日本が世界の先端に立つことになるかもしれません。

14世紀にイタリアで黒死病が流行したときは、国民の4分の1が亡くなりましたが、今回もイタリアの死者数は深刻な数字です。人口比で見ると日本の200倍ぐらいの方が亡くなっているわけですから、経済的ダメージも相当なものになると思われます。

過去に危機的状況をチャンスに変えた国として、韓国があります。97年に起こったアジア通貨危機で大きな経済的ダメージを負った韓国は、クレジットカードの使用者に補助金を出すことでキャッシュレス化を推進しました。それがきっかけで、キャッシュレス化が最も早い国の1つになったわけです。それと同時に教育の重要性を痛感して、グローバル教育を徹底して行った結果、韓国の教育意識はとても高まりました。非常事態を変革のチャンスと捉えて変わることができたいい例です。

日本では今後、都市の在り方も変わっていくでしょう。現在は企業も人も都市部に集中していますが、テレワークでどこでも働けるように整備が進めば、都市部を拠点にしてネットで全国につながる社会が実現します。

働き方に関して、「ワーケーション」という言葉があります。ワーク(働く)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語で、リゾートなどで休暇を兼ねてテレワークを行うことを意味しています。まだ導入企業は多くありませんが、今後テレワーク体制が整っていけば浸透するのではないでしょうか。新型コロナ騒動でホテルや旅館などの宿泊業界は厳しい状況が続いていますが、在宅勤務の需要拡大を受けて、ワーケーションの宿泊プランを展開する動きも出ています。この動きは地方創生の有力な材料にもなり得ます。