危機意識のない国民は不要不急の外出を続けている

いま、新型コロナを機に世界各国でデジタルシフトの波が起こっているにもかかわらず、日本はコロナそのものの対策にとらわれて、チャンスを逃しています。例えば、国を挙げて公立学校にオンライン授業を取り入れることもできたでしょう。しかし日本にはこの期に及んで、はんこを押すために出社させるような会社がまだあるのです。このままだと、このコロナ不況が終わってからも、日本は各国と経済力で差をつけられてしまいます。

政府対応経過

国民の側にも責任があります。20年4月に緊急事態宣言が出されて、外出自粛要請が法律に基づくものになりました。しかしながら、この法律には罰則がないため、効力としてはいまひとつと言わざるをえません。危機意識のない国民は不要不急の外出を続けています。

多くの国では罰則を伴った不要不急の外出禁止命令が出されています。イギリスでは公共の場に3人以上で集まることなどを禁止し、違反すれば警官から人と距離をとるよう命令されたり、最低30ポンド(約4000円)の罰金が科せられたりする措置がとられています。フランスでは、生活必需品の買い出しなどの一部の例外を除き、違反すれば135ユーロ(約1万6000円)の罰金が科されます。

また、多くの国では戦争を想定して法律が作られているので、今回のコロナ禍でも戦争のときの態勢を取っています。例えば、アメリカは朝鮮戦争中の1950年に成立した国防生産法を引っ張り出して、ゼネラルモーターズに対して人工呼吸器を生産するように命令を出しています。国防生産法とは、戦争継続のために必要な兵器・物資の増産や調達先の拡大、それにかかわる企業の賃金、そして広く一般消費財への物価統制まで、幅広い権限を大統領に認める法律です。アメリカは戦争や自然災害が起こるたびに、この法律を使って危機を乗り越えてきました。

そして、フランスのマクロン大統領は、20年3月16日という早い段階に、「これはウイルスとの戦争である」と明言して外出禁止を訴えました。世論調査によると、外出禁止や商店閉鎖などのフランス政府の感染対策に対する支持率は95%と高く、ほとんどのフランス国民が、いまの状況は戦時中と同じくらいの非常事態だと認識しています。

しかし日本では新型インフルエンザ等対策特別措置法に「緊急事態宣言」を盛り込むことに関して「首相にそれほどの強い権限を持たせるのは良くない」と声を上げた方々がとても多かった。20年3月7日付の朝日新聞朝刊の社説でも「新型コロナウイルスを対象に加える新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案が成立すれば、人権の制限を伴う措置が可能となる緊急事態宣言を首相ができるようになる。しかし、合理的な根拠と透明性に著しく欠ける意思決定を重ねる首相に、その判断を委ねるのは危うい」と非常に否定的な意見が述べられています。

各国首脳発言