自治体がいまだに「紙文化」にこだわる理由

以前から「自治体の業務は非効率」といわれてきた。そのひとつが「デジタルよりも紙を尊重する文化」だ。

自治体のデジタル化が遅れた理由はいくつかあるが、決裁などは「公文書」として作成し、保存しなければならない場合がある。行政文書は「文書管理規定」に基づいて扱う必要があり、紙をベースに業務が行われていることが大きい。「情報公開」請求への開示義務として、文書回答が多い点もあるだろう。

また、前職で行政担当記者だった編集者は、次のように語っていた。

「政令指定都市を毎日取材して感じたことは、チャットツール導入などの『業務効率化事業』には、予算をほとんどつけてもらえないのです。まずは社会保障、そして公共事業が先行し、期末に定められた業務を遅滞なく消化するのが望ましい。現状では、紙書類の決裁で問題ないのに、業務効率化にコストをかけると『税金の無駄遣いではないか』という市民の反応も恐れていました」

筆者自身も一住民として、「紙文化信仰」の弊害を感じたことが何度もある。平常時ならともかく、コロナ対策などの緊急事態では、そうも言っていられない。

ウィズコロナ・非接触の時代にできることを

これまで考察したことを整理してみよう。

今回紹介した「共有チャット」は、それ自体がすべてを変える“魔法の杖”ではないが、使い方次第で、自治体業務を迅速化する一面がある。

企業現場でもそうだが、その業務ノウハウが個人に蓄積され、組織的や部門横断的に共有されないと、「今回の場合はこのやり方」「長年、慣例で決まっている」となってしまう。

最近、コロナ後を示す「アフターコロナ」という言葉が増えてきたが、日々、厳しい状況の中で対応する人にとって大切なのは、コロナと向き合う「ウィズコロナ」だ。

「紙文化が悪、デジタル対応が善」といった単純な二者択一ではなく、できることから一気に変えていくことも大切だろう。もちろん「優先順位は何か」の視点を持ってだが、当面は続くであろう「非接触」のご時世も踏まえて、考えたい。

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