重要書類のやりとりが多い地方自治体では“紙文化”が根強い。だが、新型コロナウイルスの感染を避けるため、人や紙を介さない働き方が徐々に広まっている。経済ジャーナリストの高井尚之氏がその立役者を取材した――。
3月は、導入した自治体数が月平均の約8倍に
自治体同士をつなぐ専用チャットの導入が伸びている。「LoGo(ロゴ)チャット」という自治体専用チャットで、LGWAN(地方公共団体を相互に接続する、行政専用回線の総合行政ネットワーク)上で使えるのが特徴だ。民間企業ではSlack(スラック)などのチャットツールが使われているが、よりセキュリティー機能が高い。
2019年11月から本格運用をスタートしたが、2020年4月28日時点で、導入する自治体(関連団体を含む)が256に上ったという。
開発したのは、トラストバンクという会社で、ふるさと納税の返礼品で話題となったふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」も運営。LoGoチャットともリンクしている。
同社は「LoGoチャット」への反響をこう説明する。
「導入する自治体の数は、特に3月は毎月の平常時平均値の約8倍となりました。コロナ関連の情報共有の必要性も高まっています。例えば、LoGoチャットユーザーグループ内には『パンデミック対策ルーム』というのがあり、リモートワークを行う在宅職員だけでなく、他の自治体とコロナ対応を共有するケースも増えてきました」(トラストバンク広報)
このチャットを導入すれば、従来の手法すべてが一変するわけではないが、「手続きの迅速化」の視点として興味深い。なお現時点では「BtoB」(企業対企業)ならぬ「GtoG」(自治体対自治体)のツールで、一般住民向けではない。