記録的な猛暑で、ビールやアイスクリームが売れた今年の夏。今後、「豊水」(なし)や「巨峰」(ぶどう)など、秋の味覚が出回る季節を迎え、関係者はその売れ行きにも期待するところだ。しかし現実には近年、果物の消費量が減少傾向にあることをご存知だろうか。

年間支出金額に対する月別割合

年間支出金額に対する月別割合

総務省・家計調査によれば、平成20年の1世帯あたり果物購入量は、昭和63年の7割弱。季節による変動も小さくなる傾向がある。唯一購入量が増加しているのはバナナで、日本はその多くを輸入に頼っている。

「バナナ一人勝ち」の原因として考えられるのは、その圧倒的な安さだが、東京青果・営業情報管理課の加藤宏一氏は「とにかく抜群に安定した供給ができる国際商品で、輸入量はおおよそ100万t」と、その安定性も指摘する。バナナは1年中、フィリピンや台湾産が店頭に並び、価格があまり変わらない。「バナナダイエット」が流行となり、自動販売機の設置でも話題になった背景には、工業製品なみに供給が安定していることがあるのだ。

一方で国産の果物は、生産に季節性があるうえ、年間の生産高はその年の気候に大きく左右される。今年は開花時期の降雪で、なしの作柄は例年の8割ほどになった。ただし果物の味自体はよく、品薄感から、価格は前年の2~3割程度高い。

安く安定供給できるバナナに押され、強みであった季節感まで失いつつある国産果物だが、“品質は世界一”とその評価は高く、新興国の富裕層にも人気だ。「農業試験場などでの研究努力が結実した」と加藤氏は解説する。

(ライヴ・アート=図版作成)