そんな相当高度なコンピュータ処理でなければできないことを、人間が全部知ろうとしたらどうなるか。簡単に言えば「木を見て森を見ず」ということになるのです。細かな情報にとらわれて、一番大事な全体を見落としてしまうという意味です。

麻雀にはいい意味での「いい加減さ」も必要です。

これも経営の仕事に似ていますよね。たくさんの人間が働いている会社組織で、外部環境も知らないところで目まぐるしく変わる中、すべての情報を知ることなんてできないし、正確に未来を予測することも不可能です。経営者には大局観で判断するしかない局面も多いですが、たくさんの情報から正確に正解を導き出すことは誰にもできません。するといい意味での「いい加減さ」を持って、この辺だろうと決断できなければなりません。

これは簡単なようで、責任ある立場だと不安でなかなかできない人も多いです。それを、「今ある情報の中から可能な限り、最善を選択しました」といった部下の立場のような姿勢と、「絶対に勝たなければならない。そのために決断した」という全責任を1人で背負った経営者のような姿勢は、勝負の世界では同じ内容のことを言っても全く違います。

麻雀において、理論や期待値の積み重ねだけでは勝てないというのは、結局はそういう姿勢の違いなのです。

自分のタイミングで勝負をするんじゃない

麻雀を見て楽しむ、「見る雀」が流行り始めています。ハマっている人は自分がプレイする麻雀の誘いを断って、観戦を優先するほどです。

サイバーエージェントがテレビ朝日と共同で立ち上げたABEMA(旧AbemaTV)では、麻雀の専門チャンネルを設けて24時間365日麻雀の対局を放送しています。これがかなりの人気チャンネルになっていて、視聴者層も、ビジネスマンから学生まで幅広いです。

中でも、前回のコラムで紹介したプロのリーグ戦「Mリーグ」は一番の人気コンテンツです。

プロ野球やJリーグの試合が落ち着く10月から開幕し、毎週月火木金曜、夜7時から生中継しています。これは、スポーツ観戦などの娯楽が少ない冬の時期に楽しんでもらおうという狙いがあります。

実際、試合がない水曜日に「Mリーグロス」という言葉がSNSで飛び交うほど、熱狂している人がたくさんいます。

かく言う私も、毎日会食が終わるとスマホで結果を見てしまわないように気をつけながら帰宅し、ABEMAの追っかけ再生機能で頭から試合を見るのが日々の楽しみになっています。これ、スポーツの観戦の仕方そのものだと思いませんか?

麻雀を見て楽しむことのポテンシャルはABEMAを立ち上げる以前から感じていました。