以前からドワンゴのニコニコ生放送などで、草の根的にチャンネルを開設して放送する人たちが増え、同時にそれを見るファン層が着実に広がっていたのです。ただ、当時は通信環境などの問題があって画質が悪く、牌がよく見えなかったり、アマチュアによる制作なので番組のクオリティが低かったりといった課題がありました。

そこにスマートフォン、Wi-Fiの普及など環境面の後押しがあり、高画質で高品質な番組作りをしたABEMAの麻雀チャンネルを誕生させたのです。参入のタイミングは、早すぎもせず、遅すぎもせず、ベストだったと思います。

麻雀で心掛けなければならないことの1つに「自分のタイミングで勝負しない」というのがあります。自分の事情ではなく、環境面が揃ったタイミングで勝負しなければいけないという意味です。麻雀は失点したり後手を踏んだりすると心理的に焦りを感じるゲーム。早く上がって楽になりたいからという理由で、無謀な勝負に出たりして自滅する人が多いのです。

なぜ麻雀中継がこんなにバズるのか

現在、インターネットの動画ビジネスは、YouTubeやNetflixなど、さまざまなサービスが伸び盛りです。これはスマホやWi-Fiなど、環境面の変化が動画市場の拡大を後押ししてくれるタイミングがやってきたからです。しかしながら、この環境になる前に参入が早すぎた、あるいはタイミングが訪れるまで我慢して待てなかった動画サービスはたくさんあります。

サイバーエージェント代表取締役社長 藤田 晋氏

自社の既存事業が厳しくなったタイミングで、代わりの新規事業として立ち上げたとか、先が見通せない時期に、早く結果を出さなければいけないという理由で、一発逆転を狙って無謀な投資をしたとか、これらは勝てるタイミングを見極めていません。会社も麻雀と同じく、失敗の多くが自分のタイミングで勝負したことによるものなのです。

まだ十分にブロードバンドが普及していない時代を思い出してください。そこで動画を見てもらうのは厳しかったですよね。デバイスがガラケーだった時代は、あの画面で映画のようなクオリティの高い映像を見てもらうことが難しかった。これらは冷静になれば誰でもわかることです。

しかしながら、自分になんらかの事情があって勝負したいと焦っていると、立派な経営者であっても、こんなに簡単なことを意外にも見落としてしまうものです。

麻雀では、自分の事情がいつもつきまといます。もう半分過ぎて南場なのにまだ一回も上がってないとか、トップだったのに放銃(※2)してしまったから早く取り返したいとか。そこで焦って仕掛け始めても、平常時にやらないことを強引にやっても、成功する確率は低いです。

(※2)他のプレイヤーに自分が捨てた牌で上がられること