「入札に落ちて態度を豹変させる」
10.立つ鳥あとを濁す営業マン

営業で頑張っても、入札で敗れることもある。その受け止め方次第で次の展開が左右される。「クロージング(閉じ方)が大切」と日本HPの赤岸氏はいう。

「一社に絞る入札は行う側も辛いんです。営業さんの気持ちもわかります。ただ、今回は落ちても次回はその会社の得意分野になるかもしれない。だから次にどうつなぐかを考え、クロージングはしっかりやりたい。最終結果についても、“御社はここはよかったのですが、ここがもう一歩でした”とうそ偽りなく誠実に伝えます。これに対し、“あっそうですか、ならもういいですよ”といった反応をされるところは次回はないでしょう」

電子機器メーカーのA氏も、

「今回はごめんなさいといった途端、態度を豹変させ、音沙汰なしになる人がいる一方で、すごいなと思うのは、恨み言を表に出さない人です。“今回は力不足で申し訳ありませんでした”と真摯に受け止めてくれる人には心理的に借りができた感じがして、次に何かあったら一番に話を持っていこうと思ったりします」

馬脚を現すか、次につなげるか。営業マンの真価はクロージングで問われる。

「次につなげられない営業マンは、受注できなかった原因を商品の問題にしてあきらめてしまう。でも、会社に戻り、“商品が劣っているから落ちた”といった瞬間、社内から総スカンでしょう。できる営業はバイヤーから聞いた評価をもとに製造に提案し、次に活かす。そんな営業マンをバイヤーは求めているのです」(精密機器メーカー・B氏)

購買や調達の今後について、日揮の中島氏は、「グローバル化が進むため、景気がよくなっても、必ずしも発注が日本企業に戻るとは限らない」と警告する。

選別はすでに始まっている。そのとき、営業先のバイヤーと「ジョイントベンチャー」を組めるところだけが生き残れる。営業マンの共感力が問われている。

(松田健一=撮影)