高機能マスク「Oxybreath Pro」の広告は禁止に

さらに「感染者がつける場合は感染防止効果がある」とした後で、「そもそも感染者は自宅にとどまっているべき」と付け加え、マスク着用の必要性を徹底否定します。

無症状の感染者もいますので、健常者も感染者であり得るという前提ですべての人にマスク着用を奨励する理屈も成り立ちそうですが、なぜか議論はその方向に向かわず、マスクは不要という結論に収束していきます。

こんなニュース解説が放映された翌日、「新型コロナウイルスの流行をマスクで防ぐ」とうたった高機能マスク「Oxybreath Pro」の広告が禁止となりました。

3月4日付のBBCの報道(※2)によると、イギリスの広告基準協議会(ASA)にイングランド公衆衛生庁(PHE)から通告があり、ASAは、広告は当局による感染防止のアドバイスに反しており「誤解を招くもの」という結論を下したそうです。感染予防にマスクが愛用されている国では考えられない広告禁止措置だと思います。

※2 Coronavirus: Face mask ads banned for 'misleading' claims

感染拡大が続くも、BBCはマスク不要論

イギリス国内でマスクに対する関心が高まっているようで、BBCは再びマスク不要論を啓蒙する動画を3月16日に公表します。今回はロンドン大学衛生・熱帯医学大学院のシュンメイ・ユング氏が登場し、マスクについて解説をしました(※3)

※3 Coronavirus: Do Face Masks Work?

論調はいたって否定的。ユング氏は、多くの人々が「ウイルスから身を守るため」にマスクを着けていることを指摘し、「ウイルスが周りの空気中に浮遊しているわけではない」とそうした考えを否定します。

さらにテロップではWHOのガイドラインを紹介し「感染者以外、ほとんどの人はマスクを着用する必要なし」「また感染者や感染の疑いのある人をケアする人は着けるべき」と主張。無症状の感染者という可能性を考慮すると腑に落ちない感じがしますが、「マスクは不要」との結論に収斂していくのです。

マスク不要論からじわり変化の兆しが……

3月末からBBCの論調に変化が現れます。これには一部の米国メディアがマスク着用を肯定的に評価しはじめたことが影響していると思います。

例えば3月31日付のシンガポール在住のBBC記者テッサ・ウォンが書いた記事では、日本、中国本土、香港、タイ、台湾では「マスクを着ける方が安全であり、周囲への思いやりだと考えられている」と紹介。「マスクをしましょうと呼びかける国の方が、もしかすると当を得ているのかもしれない」と問いかけ(※4)、マスクの有効性を暗に示唆するものでした。

マスク着用に肯定するだけで、ここまで慎重な言い回しをせざるを得ないところが興味深いと思います。イギリスはとにかくマスクは不要の一点張りで、マスクは一般的に有効とは主張しにくい雰囲気があるのです。

※4 Coronavirus: Why some countries wear face masks and others don't