交渉の場で感情的になる人がいる。元大阪府知事の橋下徹氏は「感情的になる人は、交渉のポイントがわかっていない。交渉とは、双方で要望と譲歩を整理することだ。そのためには、自分の要望を明確にしておく必要がある」という——。
※本稿は、橋下徹『交渉力 結果が変わる伝え方・考え方』(PHP新書)の一部を再編集したものです。
感情的になる人が見落としている「ポイント」
交渉のときに感情的になる人がいるが、それはその交渉によって自分はどんな要望を実現しようとしているのか、つまり獲得目標の整理ができていなくて、何が交渉のポイントかをわかっていないからだ。
自分の要望と譲歩できるものをきちんと整理できていないと、相手から目の前に提示されたものを見て感覚的に「いい」「悪い」と判断してしまう。相手の提示の仕方が「悪い」と思えば、腹を立てて、感情的になってしまう。
また双方の要望と譲歩がきちんとリスト化されていないと、交渉とは関係のないことを延々と話してしまう危険が高くなる。
例えば、自分の不遇話やどれだけ困っているのかをずっと話したりする人もいる。その一方で、自分がいかに立派な人間かを印象づけるために、自分の経歴を延々と説明する人もいる。
感情的な言い合いになったり、無関係な話を続けたりしていても交渉はまとまらない。自著『交渉力 結果が変わる伝え方・考え方』(PHP新書)で詳述しているが、交渉をまとめるために最も重要なのは、自分の要望を整理し、『譲れるもの』と『譲れないもの』のラインを引くことだからだ。
だから、もし相手が感情的になったならば、双方で要望・譲歩を整理する作業に入ればいい。相手自身によってそれができないようなら、手伝ってあげてもいい。
「あなたの要望を整理するとこういうことですか?」「あなたはこの点までは譲歩できますか?」と手助けしてあげて、相手の要望・譲歩をリスト化し、その中で相手の『絶対に譲れないもの』を探っていく。