今回の危機で米国自動車のビッグスリーのうち、GMとクライスラーが破綻する深刻な事態となった。この2社とフォードを分けたものはなにか。筆者は株式会社制度の特徴である有限責任制度には、株主のモラルハザードという欠陥があると説く。
株主の経営への干渉を嫌ったフォード
米国の自動車産業にとって最悪の状況が去ったかどうかについて意見は分かれる。需要は低位で安定しているが、これからまだ二番底が来るのではないかと見る人も少なくない。仮に需要が回復しても昔の水準までは戻らないだろうという認識はほぼ共有されているようだ。同時に、電気自動車への移行が予想以上のスピードで進みそうだという認識も広まっている。少なくとも、将来のことを冷静に考える余裕は出てきたようである。
少し落ち着いてきたところで、今回の危機の原因を考えてみることにしよう。ビッグスリーのうちの2社が企業破綻を起こすというような深刻な危機がなぜもたらされたのか。サブプライムローンの破綻に伴う自動車ローンの焦げつき、その後の急激な需要の収縮といった市場の悪化が危機の原因と見られているが、原因はそれだけではなさそうである。経営上の理由もありそうだ。
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