2019年の理容業・美容業の倒産件数は、ここ30年間で最多だった。その一方で、美容室の数は増え続けている。船井総合研究所の富成将矢氏は、「特に苦戦しているのはカット4000円前後の郊外店。一方、カット1000円前後の格安店と客単価が1万円前後の高付加価値店は増えており、市場が二極化している」という――。
女性の美容院やヘアサロンで年配の女性
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半数以上の席が稼働せずに空いている状態

理・美容業界の倒産が増えている。東京商工リサーチの調べ(2019年「理容業・美容業倒産動向」調査)によれば、2019年の「理容業・美容業」の倒産件数は、1989年以降の30年間で最多の119件に達した。船井総合研究所チーフ経営コンサルタントの富成将矢氏は「なかでも経営が苦しいのは、郊外にある10席以上の中価格帯(カット4000円前後)美容室だ」と指摘する。

理・美容業界の市場規模は合わせて2兆1382億円。美容室に限ると2014年の1兆5285億円から2018年は1兆5047億円と大きく変わっていない(矢野経済研究所「理美容市場に関する調査(2019年)」2019年6月27日発表)。にもかかわらず美容室の数は増加傾向にあり、厚生労働省のデータ(「平成30年度衛生行政報告例の概況」)によると2014年の23万7525から、2018年には25万1140にまで増えている。

「美容室の平均客席数は4.9席。店舗の数が25万とすると125万席くらいある。一方で、美容師として働いている人の数は約52万人。単純計算すると、半数以上の席が稼働せずに空いている状態です」(富成氏)

過当競争のなか、これといった特徴のない店は客が減り、売り上げが減る。そうなれば美容師の収入も減ってしまう。収入減を嫌ってスタッフが店を離れれば、次のスタッフを確保できず、大幅な赤字ではなくても閉店に追い込まれてしまう。