コロナ騒ぎが残すものは「マスク依存症」だけ
社会心理学者の吉川茂阪南大学教授が朝日新聞(2月22日付)の「耕論」でこういっている。
「私は新型コロナウイルスの脅威が去っても、多くの人たちがマスクをつけ続けるのではないかと思っています。一度顔を隠すことに慣れると、今度は見せることがかえって恥ずかしくなってしまう。一部の人にとっては、マスクをつけている方がコミュニケーションをとりやすいこともあり、依存してしまうのです」
このコロナ騒ぎが残すものは、「マスク依存症」だけかもしれない。
日本人はパニックになりやすい民族だが、忘れるのも驚くほど早い。私は「健忘症型民族」、記憶力を失いつつある民族だと思っている。
そうでなければ、今回のコロナ感染対策でも、安倍晋三首相が独裁者のごとく振る舞うのを、黙って見ているわけはない。
安倍首相は2月27日、医療の専門家の意見も聞かず、自民党の重鎮たちにも相談せず、突然、新型コロナウイルス感染拡大を防止するためだと、全国の小中高、特別支援学校の休校を発表した。
中国や韓国からの入国を大幅に制限する措置も、熱心な嫌中・嫌韓論の“おともだち”の意見だけを聞き入れ独断専行してしまった。
その上、人権を大幅に制限できる「新型インフルエンザ等対策特別措置法」を改正するともいい出し、10日に閣議決定したのである。
強硬姿勢の背景には何があるのか
国民を納得させ、安心させる十分な説明もせず、矢継ぎ早に拙速策を繰り出す安倍首相に、国民はかえって不安を募らせ、マスクやトイレットペーパーを買い漁る行動に拍車をかけてしまった。
共働き夫婦やシングルマザーのことなど考えもせず、「私のいうことに黙って従え」という強権的ないい方に、国民の多くは反対、反発するだろうと思ったが、中国人もびっくりするぐらいの従順さで、付き従ったのである。
新聞も、一面を使ってこのような発作的な泥縄施策を真っ向から批判するところは、私の知る限りなかった。ワイドショーなどは、批判するどころか「まだ日本人には危機感が足りない」と、従わない奴は“非国民”といわんばかりである。
宰相にとって、こんな扱いやすい国民はいないだろう。戦後最大の危機、国難だといえば、嫌々ながらもいいなりになる。反対する者がいれば、ネトウヨや愛国主義者たちがよってたかって、叩き潰してくれるのだから。
これまでの安倍首相は、口先だけだが、「国民の皆様に寄り添う政治」などといい繕ってきたが、今回は、いら立ちを隠そうともせず、「ごちゃごちゃいわずに、オレのいうことに従え」と、ヒットラーもかくやといわんばかりの強硬姿勢に出た背景には何があるのだろう。