家風や文化を継ぐのが相続の目的だった
かつて、ほとんどの人が「後継者」だった時代がありました。武士にしても、農民にしても、町人にしても、基本的には家業を継ぎ、その風習は戦後すぐまで続いていたのです。そして家を継ぐことは、非常に名誉で、やりがいのあることでした。
今、「相続」と聞くと、お金や土地、株式など、財産をもらうというイメージが強いかもしれません。しかし、昔の相続はその家に伝わる文化や家風を継ぐことが主要な目的でした。それを実現するために財産が必要、という位置づけだったのです。
武将にかぎっていえば、相続というよりも事業承継と呼んだほうが正確かもしれません。相続はお金や土地のような財産をもらうこと。受け取る側の資質でその価値が変わることはありません。一方で事業承継は、受け取る側の資質次第で、価値が高まることもあれば、損なわれてしまう場合もあります。
特に戦国時代は、継ぐ者の資質、継ぎ方の善しあしによって、如実に結果が変わる世界でした。有能な後継者がしっかり家を継げば国は大きくなりましたが、凡庸な後継者だったり、継ぎ方がよくなかったりすると、すぐに攻め滅ぼされます。