最終的には勇気・度胸・覚悟といった、論理や数値だけでは割り切れないものが必要になってきます。そう考えると、やっぱり経営者の仕事に一番近いと私は思います。実際、世の中の社長は麻雀が強い人が多いです。

ちなみにサイバーエージェントには麻雀部があり、200人くらいが所属しています。かなりの回数を重ねた通算成績を記録していますが、総合1位は社長である私です(笑)。もちろん、忖度や遠慮は全くありません。先ほど述べた通り、運は結局平等なので、実力の部分で差がついているのです。

何でもいいたった1つの軸を持て

ビジネスでも麻雀でも、自分の中にたった1つの軸があり、それを基軸にできれば強いです。軸が2個、3個とあると、判断するときに一貫性を欠きます。例えば、サイバーエージェントのビジョンは「21世紀を代表する会社を創る」です。その軸に対して、近いか遠いか、よりプラスかマイナスかで、すぐに経営判断がつきます。

サイバーエージェント代表取締役社長 藤田 晋氏

麻雀でも、その日にトータルで勝てばいいのか、その一回の勝負に勝たなければいけないのかで、軸は変わります。目の前の勝負にも勝ちたいし、その日トータルでも勝ちたいと、2つの軸を持っている人はブレやすいですね。その日トータルで勝つことを軸にするならば、損な局面で無理をする必要はないのです。

軸を1つだけしっかり持ち、一貫性のある経営者は、例えば名経営者のアドバイスを聞いて「なるほどここは取り入れられる」と選別し、必要なものだけを自分の血肉にできる。しかし軸を持っていない人、あるいは軸が複数ある人が誰かのアドバイスを聞いても、自分のものにはなりません。一貫性もないのに、前提条件が違う人を上辺だけ真似しても、意味がないのです。

では軸は何にしたらいいか。実は何でもいいのではないかと思います。風水や方角といった占いのようなものを信じ込んでいる経営者がたまにいますが、意外といい会社を経営していたりします。社員の立場だったら、占いを信じて経営判断を下している社長は嫌ですが(笑)、何にせよ強く1つの軸があることが、軸が何であるかよりも大事なのだと思います。ちなみに麻雀プロの中でも、オカルト的なことを信じ込んでいるベテランは意外と強いです。

▼究極の頭脳スポーツ「麻雀」ってこんなゲーム
1850年代に中国で誕生し、明治時代末期に日本に伝わったとされる麻雀。4人1組で卓を囲み、136ある牌を組み合わせて、高得点を目指し役を完成していく、運・実力・駆け引きが複雑に絡み合う頭脳スポーツだ。
ビンゴなどでのアガリ直前の状態の「リーチ」、同じことが続けて起きる「レンチャン」、真向かいの位置や人を指す「トイメン」など、日本人の生活に何気なく浸透している麻雀用語も多い。