中東の未来を切り開くのはトルコか、それともイランか?

近代化を出生率から判断すると、中東の近代化には、脱宗教・世俗化という「西欧化の道」と、教義解釈の自由という「シーア派の道」の2つがあるように思われる。

国父アタチュルク以来、世俗化を国是とし、近代化を推し進めていたトルコが、反グローバリゼーションの流れの中で、ナショナリズムとイスラム回帰への動きが強まる中、出生率低下も思ったほど進展しない一方で、シーア派の道をたどるイランがトルコを少子化対策の進展で上回った点に将来への暗示を見て取ることもできよう。

金曜日のモスクに子供のグループ
写真=iStock.com/efesenko
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ポール・モーランドは昨年刊行され日本でも評判となった『人口で語る世界史』(文藝春秋)の中で、「現在の中東と人口構成が同じだったころのヨーロッパは、暴力的で戦争で荒廃した大陸だった。中東の人口動向がヨーロッパと同様になれば、現在のヨーロッパのように平和になるという希望が持てる」と言っている。こうした未来を切り開くのは、欧米先進国からの期待とは逆に、トルコではなくイランであるようにも見えるのである。

これは私だけの意見ではない。2006年にはすでに「米国は世界平和にとってイランより危険」と言い放っていたフランスの人口学者エマニュエル・トッドは、希望的観測として、イランには「シーア派の伝統に根ざした非宗教性が出現する」かもしれないと言っているのである(『文明の接近』藤原書店、p.169)。

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