東京五輪では、さらに一歩先の世界に

こうやって自分の主観を大事にすると同時に、走りを客観視します。撮影したフォームをチェックする。主観と客観がずれるときのほうが多く、それをすりあわせていく。自分はこういう意識で走っている、こういった体の使い方をしたい、そうすればこのフォームになるはずだ。これらの主観に対して、映像のフォームが全然違うこともある。そのときは意識のポイントがずれているのかなと思う。そこで少し主観を変えてみたりして、ずれをなくしていくという作業をずっと行っています。

陸上100メートルという競技はごまかしがきかない。結果としてはっきり出ます。少しのミス、少し体が痛いといったことが、0.01秒単位で表れてしまう。怖さでもあるけれども、面白さでもある。シンプルだけど奥深いです。

0.01秒を削るために4年間をかける意識になりすぎると苦しいので、気持ちを逃がすことも。目標は1つですが、アプローチの方法はたくさんあります。走る本数を増やす方法もあるし、筋力を高める方法もある。一方で怪我のリスクも常にある。走れなかったらその目標を達成できないかというと、僕はそうではないと思う。その時期にしかできない体作りをして、きちんと走れるようになってから走る。そうすれば自分が当初描いていた目標に到達することができると思っています。具体的な練習方法にはあまりこだわりません。

イメージトレーニングでまずイメージするのは、目標とする9秒台ではなく、自己ベストの10.00を出したときの走り。10.00で走る感覚、景色が残っているので、そこに技術的なものなど何か1つを足して走る自分を想像する。そして9秒台で走るイメージを作ります。

10.00を出したときも、決して満点のレースではなかった。そういうことをしっかり修正した自分を想像して、9秒台はこういう感じかと。

近いところの目標としては、代表選考はこれからですが東京五輪があるので、さらに一歩先の世界に行きたい。リオ五輪では、4×100メートルリレーで銀メダルを獲りましたが、100メートルはロンドン、リオとずっと準決勝止まりなので、その先に行きたいという想いが強いです。

(構成=須藤靖貴 撮影=岡村隆広)
【関連記事】
速すぎてヤバい「ナイキ厚底」どこが違反なのか
ナイキが「マラソン厚底規制」に高笑いする理由
白鵬が告白「日本人になって本当にうれしい」
元日本代表主将・長谷部誠の本質は「8番」にある
一流ランナーの条件"羊羹を5ミリに切れるか"