「ゆるキャラ」高齢者に群がる郵便局員

「人生は、夢だらけ。」

かんぽ生命がテレビCMで使ったキャッチコピーだ。郵便局の現場取材を進めると、こんな美しい言葉とはほど遠い「隠語」を数多く耳にした。

「ゆるキャラ」「半ぼけ」「甘い客」。郵便局によって違うが、契約を結びやすい一人暮らしの高齢者に対し、こんな呼び方をする局員が一部に存在した。かんぽの新規契約者のほぼ半数は60代以上。高齢者を中心に、郵便局ブランドは絶大な信頼感を持ち続けてきた。

局員に頼まれると断れない顧客は多い。自らの預金通帳を警戒感なく局員に見せる人もいる。ノルマに追われ、販売実績を上げるため、高齢者頼みの契約に走る局員がいて、汚い隠語も定着したようだった。

狙われた高齢者、コツコツ貯めたお金

70代女性は2018年、息子を被保険者とする養老保険を契約した。同じ保険に加入済みで、7カ月間は保険料が二重払い。預金がわずかなのに、19年も500万円の養老保険を契約し、保険料を全額払い込んだ。

片耳が遠く、補聴器を手放せない。近年は記憶や判断能力が衰えた。息子が保険のことを尋ねても、理解していない様子だった。契約に不審な点があったため、問い合わせると、郵便局員が7月上旬にやってきた。

「(契約は)すべてお母様のご意向です。証書以外ないのもお母様の意向。全部捨てたいと言われていました」

そう言い張る局員の説明に、息子は不信感を高めた。契約当時、自らも局員から連絡を受けたが、深く考えずに同意してしまっていた。「うかつだったが、母ちゃんがコツコツためたお金が食いものにされた」と憤った。

90代女性1人に、10年間で54契約

かんぽが金融庁へ報告した事案には、耳を疑う事例もあった。東北地方の90代女性は10年間で54件の保険を契約し、すべて解約していた。勧誘に携わった局員は計27人。1人の高齢者をねらい、局員が入れ代わり立ち代わり契約を取ったようだった。

こうした問題が起きる一因には、かんぽのシステムのチェック体制の不備があった。他の民間生命保険会社は、高齢者らが複数の保険を契約すると、本部の担当者が顧客に対して意向確認などをしている。かんぽの保険を扱う郵便局は、そうした取り組みが足りなかった。

顧客への勧誘でトラブルになった際、意向確認書や不利益事項の説明書などに署名があれば、「顧客の意向だった」との販売側の主張もありうる。ただ、勧誘時にうその説明をしたり、重要事項を説明しなかったりすれば、販売を担う局員は、保険業法違反に問われる恐れがあった。