三国志の「赤壁の戦い」を描いた『レッドクリフ PartII』が上映される。この映画を製作したジョン・ウー監督と、中国古典を熟知するSBIHD北尾吉孝CEOに本物のリーダーの魅力について語ってもらった。
【北尾】 『レッドクリフPartII』、拝見しました。いよいよ「赤壁の戦い」の本編が描かれるわけですが、映像のスケールの壮大さ、CG技術を駆使した映像美に引き込まれました。クライマックスの水上戦、曹操の船団に火が燃え広がってゆく炎上シーンは特にすごい。あれだけの迫力は滅多にお目にかかれない。
もう一つ感じたのは、我々が子供の頃に読んだ『三国志』とはまた一味違った、まさにジョン・ウー版『三国志』であるということ。象徴的だったのがエンディングです。我々が読んでいた『三国志演義』では赤壁から敗走した曹操は関羽の情で落ち延びますが、今回の映画ではそういう描かれ方はしていませんね。
【ジョン・ウー】 ご感想ありがとうございます。『レッドクリフ』という映画を作るときに最初に考えたのは、“東洋系”の情感や精神文化というものをいかに世界の人々に伝えられるか、ということでした。100億円という制作費を投じた映画ですから世界的な市場が必要になります。そこで構想段階から、史実にこだわらないで映画的なアングルからわかりやすいストーリーの三国志を撮ろうと考えました。中国の歴史や三国志の登場人物を知らない西欧の観客も一つの物語として楽しめる映画にしたかったのです。
【北尾】 まったく間違いのないご配慮だと思います。小喬(周瑜の妻)の役回りも非常にいいアクセントになっている。陳寿の『三国志』や『三国志演義』では小喬についてはあまり触れられていませんが、彼女のエピソードを盛り込んだことで映画のエンターテインメント性がさらに高まったという感じがします。
【ジョン・ウー】 呉の部将、黄蓋が曹操に対して用いた「苦肉の計」を、映画では小喬が実行したことにしています。映画のテーマの一つは「団結の精神」。登場人物の一人ひとりが最終的に自分の役割をまっとうするということです。小喬は現代の女性の独立した個性、勇気と責任感を表していて、勇気を出してほかの皆と一緒に問題を解決しようとする。彼女の存在がこの映画を面白くしていると思いました。