<strong>ジョン・ウー</strong>●映画監督<br>1946年、中国広州市生まれ、香港育ち。73年『カラテ愚連隊』で映画デビューした。86年『男たちの挽歌』、97年『フェイス/オフ』、2000年『ミッション:インポッシブルII』など世界的ヒット作を連発する巨匠。18年前に構想した『レッドクリフ』は私財を10億円投入。黒澤明監督を敬愛する。
ジョン・ウー●映画監督
1946年、中国広州市生まれ、香港育ち。73年『カラテ愚連隊』で映画デビューした。86年『男たちの挽歌』、97年『フェイス/オフ』、2000年『ミッション:インポッシブルII』など世界的ヒット作を連発する巨匠。18年前に構想した『レッドクリフ』は私財を10億円投入。黒澤明監督を敬愛する。

【北尾】 陳寿の書いた歴史書の『三国志』から、『三国志演義』という歴史小説が生まれたことで読者が爆発的に増えて、アジア中に三国志が広まりました。同じように今回の映画によって、今度はアジアから世界に三国志のファンが広がるのではないかと思います。若い時分に三国志を枕元に積み上げて、徹夜してでも読みたいという気持ちに駆られたものですが、今回、PartI、PartIIと拝見していて、同じような気持ちになりました。

【ジョン・ウー】 私も幼い頃から三国志が好きで、11歳のときから三国志のマンガや映画を夢中で見ていました。三国志の英雄を紙に描いてガラスに張って、布団を被って懐中電灯でガラスを照らすと白い壁に絵が映るんですね。懐中電灯を動かすとガラス絵のキャラクターたちが映画のように動き出すのが楽しくてよく遊びました。当時、一番憧れていた登場人物は趙雲子竜。諸葛孔明も大好きでした。『レッドクリフ』の準備段階でたくさんの歴史書や関連資料を読むうちにどんどん惹かれていったのが呉の最高司令長官である周瑜公瑾です。『三国志演義』では少し貶めて描かれていますが、本当の周瑜はとても正義感に溢れた心の広い颯爽とした人物です。知恵があり、芸術の才もあり、何より懐が深く、洞察力に優れたリーダーでした。

今、世界中で紛争やさまざまな問題が起きている一方で多くの道徳的観念が曖昧になってきています。そういう時代だからこそ、周瑜のような正義の代弁者を映画の中で表現したいと思ったのです。

『レッドクリフ PartII―未来への最終決戦―』は4月10日(金)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国超拡大ロードショー。

『レッドクリフ PartII―未来への最終決戦―』は4月10日(金)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国超拡大ロードショー。

【北尾】 私も周瑜は非常に評価しています。彼は36歳という若さで亡くなりますが、その直前の34~36歳の2年間に赤壁の戦いで生涯最大の脚光を浴びる。もし長く生きていれば、三国志の行方はまた違ったかもしれないと思わせる人物です。

誰か数えた人によれば、三国志にはパッと出てきてパッと消える人も合わせて3800余人の人物が登場するそうです。主役と準主役を合わせても50数人。それぞれに個性豊かで素晴らしい。『レッドクリフ』もそうですが、一般的に悪役として描かれることが多い曹操も私は評価しています。決して『乱世の奸雄』というだけではない。新しいことをやろうとした、日本で言えば織田信長のような人物ではないでしょうか。

(小川 剛=構成 岡倉禎志=撮影 ©2009, Three Kingdoms,Limited. All rights reserved.)