「エンペラー」の称号を得た明治政府の猛アピール

こうした明治政府の活動が功を奏し、現在でも日本の天皇は、海外では「皇帝(Emperor)」という称号を得ています。たとえば、英国王室のエリザベス女王の称号でさえも「女王(Queen)」であって、「皇后(Empress)」ではない。世界有数の伝統を誇る王室でさえも、「King/Queen」と呼ばれるなか、日本の皇室は「Emperor/Empress」という特別な称号を使用することが認められています。

明治時代には、エチオピア王室も「Emperor/Empress」の呼称が使われていたそうですが、現時点では世界中でこの呼称が使われているのは、日本の皇室だけ。これは、明治政府が世界中に「日本の天皇家は万世一系である」と訴えた主張が、見事に影響していると言えるのでしょう。

諸説ありますが、少なくとも26代の継体天皇(450?-531年)以降は、天皇家は一つの血筋でつながっているのだと考えられています。それだけとってみても、世界一古い王家であることは、間違いありません。英国王室以外のヨーロッパ王室の血統は、古くとも18~19世紀前後のナポレオン戦争くらいから始まったものが大半です。

国内外で利用された皇室の“伝統”

欧州の王室は、1800年代ごろに外国から来た人が、王となるケースが多い。そう考えると、日本の皇室がいかに古く、歴史と伝統を持っているかという話は、外国に向けて発信してもたいへんに誇らしいものです。また、この主張は、国外だけではなく、国内に向けても、明治政府が中央集権国家を作る上での大きな武器になりました。

「天皇家は世界でも類を見ないほどに、古く、伝統がある。長い間、日本を見守ってきた天皇のために、国民が力を集めて頑張ろう」

こうした、非常にわかりやすいスローガンがうまく作用し、明治政府によって、日本という国はひとつの国へとまとめられていきました。この例を見てもわかるように、「我が国には長い歴史がある」と主張することは、国内外に強い影響力をもたらします。