マックのドライブスルーに、頻繁に出かけるという友人がいる。ベンチャー勤め、午後8時に寝て深夜0時に起きるという生活サイクルで、午前2時頃、出勤途中に立ち寄る。
「サラダマックに野菜ジュースとヘルシーなメニューもある。店員やほかの人に、寝不足の顔を見られない気楽さもある」
このように働きづめで時間がない若き富裕層たちが、ドライブスルーを利用するケースが増えているという。24時間営業・ドライブスルー拡大の目的は、販売機会を増やし、客数を上げることだ。コンビニから顧客を奪う狙いも大いにあると原田CEOは言う。
「前まではランチのピークタイムの売り上げへの依存度が高すぎたんです。朝食、スタックタイム、ディナータイムと前後の時間帯も客数を伸ばしていかなければならない。顧客の立場から考えると、たとえば店が夜22時に閉まるとします。『おっ、今21時45分だ。まだぎりぎり間に合う』と思っても、普通はほかの店に行っちゃうでしょう? 24時間営業していれば、営業時間を気にせず安心してゆっくり入れます」
しかし、その分人件費や光熱費等の経費がかさむのではないかと気になる。
「24時間営業のほとんどはドライブスルー。クルーは最低人数で済む。その他の24時間店も、人件費や光熱費は割合で言えば大したことがない。大きいのは原材料費、その次が家賃です。原材料のコストを下げるのでなく、家賃のコストを下げるにはどうするか。10時間開けて家賃を10で割るのか、24時間開けて24で割るのか」(原田CEO)
原田CEOがこだわるのは、企業が持っている総資産が、利益を得るのにどれだけ有効活用されているかという点だ。その考えを数字で表すのが、ROA(総資産利益率)という指標である。当期利益を総資産で割った比率で、総資産からどれだけの利益を上げたかを示す。
マクドナルドの場合、原材料費、家賃、人件費などをいかに効率的に活用するかが大切だ。24時間営業は、多様化した生活スタイルに合わせ、便利さの訴求と客数を増やすことで、資産効率を高めるための戦略である。今、マクドナルドの直営店とフランチャイズ店の割合は、7対3だが、5年以内にそれを3対7に逆転させる理由も、ROAを高めるためだ。
「我々が資産を全部持っていたら、分母はめちゃくちゃ大きくなってしまう。我々は、インフラや、新規投資にお金を集中させるのが正しい。そうすれば、総合的な投資額が最大化されて、株主価値も高まるのです」(原田CEO)
原田CEOの理論は、就任以来一貫している。図の、04年以来使用しているシーケンスにすべてが記されている。
これを現場の社員に理解させ、商売根性を持たせ、社員に数字の感覚を持たせることが必要だと原田CEOは力説する。
「だが見える数字だけで事業を動かすと失敗する。心理を正しく読み続けなければ、会社は即座に脳死する」
【McDONALD'S DATA FILE(5)】
マクドナルドの次の狙いはコンビニの顧客
100円メニューに新メニュー、価格改定、24時間営業……。04年から原田CEOは新施策を次々と打ち出している。しかしながら原田CEOが重視するROAを改善するためには、現場の苦労も絶えない。「できだけ残業するな。もっと効率的に働く仕組みを考えろ」と、原田CEOは働き方や時間の使い方に変化を促している。