堂々たる体躯の義足選手に「パパ、あれ何?」

障がい者とどう向き合えばいいのか――。

筆者は『Voice』誌(PHP研究所)で2年間にわたって連載した「パラアスリートの肖像」を先ごろ単行本にまとめて上梓したが、予備取材の段階からずっと悩み続けたのが、この「向き合い方」の問題だった。

2017年6月17日、第1話の主人公である走り幅跳び・三段跳びのパラアスリート、芦田はじむ選手が出場する大会(第28回日本パラ陸上選手権大会)を見るため、まだ幼い息子を連れて東京の駒沢オリンピック公園陸上競技場に出かけていったときのことである。

撮影=尾関裕士
パラ陸上の芦田創選手。

誤解を恐れずに言うが、そこは“多様な身体”によってあふれた場であり、私は息子がどのような反応を示すか、おっかなびっくり見つめていた。

芦田選手は子ども時代にデズモイド腫瘍という難病を経験しており、腫瘍のあった右腕の方が左腕よりも手のひらひとつ分短く動かすこともできないが、障害の程度としては軽度で、よくよく見なければ右腕が短いこともわからない。

だが、競技場には片足義足の選手や両足を切断して車いすに乗っている選手などが大勢いるのだ。

「パパ、あれ何?」

息子が不思議そうな表情で指を差す方を見ると、堂々たる体躯の片脚義足の選手がこちらに向かって歩いてくるところである。いったいどう説明すればいいのか、迷った。