フルマラソンはイーブンペースで走ると失敗する

筆者は、取材活動と並行して女性限定のランニングクラブを主宰しているが、普段の月間走行距離がわずか20km~40kmほどでも大半の会員がフルマラソンを4時間半前後で完走している。マラソン前の一番走る時期でも月間60~80km。つまり、レース前でも走る距離は1日あたり最長でも2km台ということになる。

(1)の「マラソンはきつい、つらい」というイメージが薄らいだのではないだろうか。女性よりもスピードのある男性なら、月間100km(1日あたり3kmちょっと)ほどのトレーニングでサブ4(4時間切り)は悠々と達成できる可能性が高い。

マラソン攻略法として、イーブンペースを軸に考えている人が多い。その裏には(2)の「オーバーペースは禁物」という固定観念がある。

たとえば、「キロ5分40秒」ペースで走り切ると、フィニッシュタイムは3時間59分06秒。めでたくサブ4となる計算だ。しかし、実際はキロ5分40秒ペースで走ろうとすると、たいてい失敗する。

スタート直後は、大勢のランナーが同時に走りだすため大混雑となりペースが上がらない。また、途中でトイレに行くこともある。イーブンペースは事実上難しい。

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さらに、月間1000km以上を走り込む実業団ランナーでも終盤は失速している中で、月間練習距離が100km未満のランナーが終盤までペースを維持することは至難の業だ。

そう考えると、サブ4を目指すうえで、「キロ5分40秒」というペースで走る練習は意味がない。では、どうしたらいいのだろうか。

フルマラソンは「分解」して考える

最初から42.195km先のゴールを目指すと、その道のりは果てしない。しかし、フルマラソンを分解して考えると、ハードルは下がる。具体的にいうと、「25km」+「17.195km」という2つの局面に分けるのだ。

最初の25kmが「等速局面」(気持ちよく走る感じ)で、終盤の17.195kmが減速局面(無理せずにフォームを意識して走る)になる。

あるテレビ番組でマラソン5時間半切りを目指す元女性アスリートが、スタートからゴールまでイーブンペースで走るようにコーチから指示されていた。その走る姿を見たが、過剰に「イーブンペース」を守ろうとするためどこか窮屈で不自然な走り方をしていた。これは難しいなと思っていたら、案の定、目標タイムを大幅にオーバーしてのフィニッシュになった。

後半のペースダウンを心配するあまり、前半はおさえ気味に走り平均ペースで刻むと、かえって必要以上にダメージを受けてしまうことが多い。ゆっくり走ることは、ブレーキをかけて走ることになるからだ。そのブレーキをかける労力が意外に体力を消耗させる。

へんに自分を抑えずに、気持ちよく走れるスピードで進んだほうが、身体へのダメージは少ない。そんなことをしたら、後でへばるという人もいるだろう。だが、25km以降は徐々にペースダウンするのが自然な流れ。そこで頑張ると終盤で走れないほどの大失速につながってしまう。

前出の3大思い込みの(3)「35kmの壁」というのは、無理して走るからこそ起こる現象で、後半は徐々にペースを落としていくイメージを持っていれば、“壁”にはならない。

25kmまで気持ちよく走り、後半は自然にペースダウンしながらゴールを迎える。そんなレースプランだと無理が少ない。