景気減速を食い止める術がわからない

足元、従来型の韓国の経済運営は行き詰まりつつあると考えられる。輸出の落ち込みがそれを示唆している。

過去の景気循環を振り返ると、世界的に需要が後退する局面において、韓国では半導体関連の企業などが設備投資を増やした。その後、米国や中国の景気が上向き、世界の需要が高まるとともに韓国の輸出が増加した。それによって韓国経済は成長を遂げてきた。輸出依存型の経済運営を維持するために、過去の保守派政権は、財閥企業の経営を重視してきた。

しかし、この発想で韓国経済が全体としての安定感を取り戻し、さらなる成長を目指すことは難しくなっているとみる。一つの大きな要因として、韓国経済にとって最大の輸出先である中国経済が減速していることがある。

中国政府は財政・金融政策の両面から景気の下支えを重視している。中国人民銀行は金融機関向けの資金供給を増やしている。また、中国政府は減税策も導入している。にもかかわらず、成長率は低下し、債務問題が深刻化している。中国経済が依存してきた固定資産への投資も鈍化している。

新車販売台数も落ち込んでおり、内需も低迷気味だ。「どのようにすれば景気減速を食い止めることができるかわからない」というのが中国共産党政権の本音だろう。

中国の需要は当てにならない

韓国にとって、中国の需要を当てにして景気回復を目指すことは現実的ではなくなりつつあると考えられる。それに加え、韓国と中国の経済的な関係も大きく変化している。韓国から調達してきた半導体などのIT関連分野において、中国は自国企業の競争力を高めようと国家総力で取り組んでいる。

その実力は無視できないと考えなければならない。米国政府が中国のIT先端分野での覇権強化を警戒し、通信機器大手のファーウェイや、監視カメラ大手のハイクビジョンに制裁を発動したことは警戒感の裏返しだ。中国の需要を取り込み、半導体輸出などによって成長を実現してきた韓国経済は行き詰まりというべき状況を迎えている。

この状況下、構造改革の重要性が高まっている。韓国経済が落ち着きを取り戻して国力を高めるためには、国全体で新しい発想を実現し、半導体などの輸出に代わる経済成長の源泉を手に入れなければならない。

また市場原理に基づいて成長期待の高い分野にヒト・モノ・カネが再配分するためには、時代に合わなくなった法規制などを見直したい。規制を緩和、あるいは新しいルールを策定することで民間の活力向上を目指すべきだ。