退職後、見知らぬ集団に改めて入っていくのは、案外とハードルが高い。私がお勧めするのは昔の仲間、例えば中学・高校時代の仲間ともう1度つながりを持ってみることです。特に高校時代の仲間らに声をかけて、幹事役を務めることが手っ取り早い入り口でしょう。自ら手をあげて、新しいコミュニティをつくるのは、ものすごく高揚感がありますよ。

幹事役は大変ですが、参加者からは感謝されますし、いずれ新しいコミュニティをつくるときのヒントが得られます。同級会などで、こまめに幹事をやっている人は友人も多い。「私が幹事やります」と言うと、手伝ってくれる人も出てきます。

さらに言えば、異性を交えたグループで交流するほうがいいと思います。なぜなら、本来男性は女性に比べるとヨコのコミュニケーションが苦手です。でも定年後大事なのは現役時代の上下関係ではなく、ヨコの関係なのです。それを学ぶためにも同じグループに異性が入るというのはとてもいいことです。とは言え、最初は同性だけのグループでスタートしてもいいでしょう。

「管理職やってた奴は絶対、独善的になる」

今はSNSを使っている人も多いですから、フェイスブックで「友達」をつくり、同時にそこで「グループ機能」を使ってグループを立ち上げるのもいい。映画を楽しむ会とか、自分の好きなことをテーマにして、そこに何人か友人を誘う。そこからオフ会で会って輪を広げていくといいんじゃないかと思います。

カラオケでも演歌しか歌わないようなある先輩が、定年退職後にチェロを習い始めました。理由をきくと、「俺たちサラリーマンは、何でもやりくり上手で何とかこなしてきた。だけどな、チェロなんて手も足も出ない。30代のお兄ちゃんの先生にボロクソに言われる。この野郎と思うけど、できないんだからしょうがないよな」と言うのです。

「放っとくと、年寄りは独善的になっていくんだ。まして、おまえみたいに管理職やってた奴なんて絶対そうなる。だからそういうところに行って、手も足も出ないことを習い始めれば、自然に素直になれる」

その先輩こそ独善的な方でしたが、退職後、地域や友人、兄弟から疎遠にされ、困った揚げ句、ものの本に書かれていた通り思い切ってやってみたら、「まるで憑き物のように、自分の肩についていたものがスッと落ちて、結構素直になることができた。そうすると、友達が寄ってくるんだよ」。人も変われば変わるものだと思いました。「ちょっとやってみようかな」と一歩踏み出すことが、何よりも大切だと思います。

▼独り身男性向けゼロから友達の輪をつくるワザ

「高校の同期」「男だけ」の会の幹事をやる
最も容易。男女混合はハードルが高い。幹事は感謝されるし、新しいコミュニティづくりのヒントになる。
フェイスブック上でグループを立ち上げる
趣味の集まりから出発すると集まりやすい。オフ会で親交を深め、そこから徐々に輪を広げていくとよい。
自分と最も縁遠い趣味の教室に入る
初心者だと謙虚になれる。相手のバックグラウンドに関係なく、対等に接することができるようになる。
(構成=高橋盛男 撮影=初沢亜利)
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