【重粒子線治療】
治療費1回300万円でも採算合わないハコモノ先行
世界初の医療用重粒子線加速装置(HIMAC・写真F)が千葉県・放射線医学総合研究所(放医研)に誕生してから16年が過ぎた。昨年度の患者数は692名、累積患者数は5500名に迫り、施設の数も増えている。
重粒子線治療の適応がんは、前立腺がん、肺がん、肝がんなど。ただし、他臓器への転移がないことが条件である。また、患者数が多い大腸がんや胃がんは消化運動で臓器が動くため、照準を合わせにくく適応外だ。
通常の放射線治療で使うX線に比べ、腫瘍に集中照射できるとされる重粒子線治療だが、ネックになるのは、保険適用外であるため、1回約300万円となる自己負担費用。それでも「年間の施設維持費が15億~16億円はかかる。300万円ではとても採算が合わない」(放射線医)。研究事業から国民に貢献する医療に脱皮するには、費用を上回る効果を証明する必要がある。ハコモノ先行の運用倒れにならないよう願いたい。
※すべて雑誌掲載当時